奴隷として生まれた天才

津本 なを

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一章 格差を広げるもの

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 ――三人が家に帰ったら、もう十二時を過ぎていた。
「みんな風呂もう入っただろうから、順番に入っちゃおうか。お前らいいよ、先入って」
 家へ帰る途中、たわいもない会話をして、すっかりユウキと真央は打ち解けていた。
「りょーかい。ユウキ、お風呂一緒にどう?」
「いくわ」
 二人がお風呂に入った後、ユウキからさっき取らせてもらった血液を検査にかけるため実験室に向かった。
 ――ユウキは今までどうやって暮らしてきたのだろう。
 あの見た目で、あのしゃべり方……。
 相当変わっている。――学校の教師にもあれなら、間違いなく体罰の対象だ。
 かといって、ユウキが敬語を使っているところを想像できない……。
 ――――まあ、これから仲良くなって、聞けばいい話だし、考えるだけ無駄か。
 検査器に血液をセットして俺がリビングに戻ると、ユウキと真央が騒がしく話している。
「だからこれ着ればいいじゃない、そっちは汚れてるでしょ」
「――いやよ」
「それはあとで洗濯して、明日返してあげるから……。ね?」
「――いやよ」
 リビングではさっきまで着ていた黒いフード付きのコートを着たユウキと、パジャマ姿の真央が揉めていた。
「ユウキどうしたの?」
「真央の服はいやよ」
「なんで?」
「色が嫌よ……、あとフードがない」
 ユウキが、真央の服を見て、『イヤだ』という風ににらんでいる。
「そういうことね、――ちょっと待ってろ」
 ――自分の寝室に行って、黒いパーカーと黒いスウェットを持ってきた。
「ユウキ、これはどう?少し大きいかもしれないけど、我慢できる?」
「我慢できるわ」
「――健君、ちょっと待ちなさいよ。あたしの黒いパーカーとスウェットでいいわ、それ、片づけてきて」
 真央がパーカーとスウェットを持ってきた。
「お前のならサイズも同じくらいだし、そっちのほうがいいな。分かった。俺のは戻してくる」
「――いやよ」
「なんで……?」
「健のがいいわ」
「そうか。じゃあこれ貸してあげる」
 ユウキに服を渡すと、真央が少しふてくされた顔でこっちを見ていた。
「私は健君の服なんて借りたことないのに……」
「なんか真央言った?」
「――健は早く風呂入りなさい!私とユウキは、寝とくわよ。おやすみなさい」
「おう、おやすみ。ユウキの事よろしくな」

「あーーーーっ。疲れたぁーー」
 湯船につかり、今日あったことを思い出す。
 会見があって、真央とけんかして、ユウキに会った。
 どう考えても一日に起こっていいことじゃない。
 本当に疲れる。
 忙しくてそんなこと考える暇もなかったが……。
 ――ユウキってかわいいよなぁ。
 真央もそこそこだけど……。
 ユウキは胸がむっちゃデカかった……。

「何を考えているの?」
「ひへぇっ⁉」
 ――俺の服を着たユウキがいる。
「幸せそうな顔するのね」
 平然と言ってくる。
「な、何でここにいる?」
 俺は裸で……、湯船につかっていた。
「いちゃダメ?」
「それはだめに決まっているよなぁ」
 俺は今日一番の大声を思わずあげた。
「そうなのね」
 さも『初めて知りました』みたいな口調で言ってくる。
「いや、俺裸だから駄目だよね?解る?」
「分かったわ。でも聞きたいの」
「な、なにを?で、でもその前に後ろを向いてくれ!頼むから!」
 ユウキが入ってきた時からずっと、股間を両手で抑えながら話している。
「なんで健はあたしを助けようと思ったの?」
 ユウキは俺の必死の頼みなんて、そっちのけだ。
「そ、そりゃあ、あれだけ助けを求められたら放っておけないだろ……。というかお前は後ろを向け!」
 ようやく、ユウキが後ろを向く。
「誰もが無理だといったわ」
「ユウキには悪いけど……、俺も無理かもしれない。――でもまだ分からないんだ」
 何といっても、俺にはあの図書館がある。
「そう」
「そ、それで……話はそれだけか?」
 無表情でいられるユウキはやはり変わっている。
「ええ」
「じゃ、じゃあ早く寝ろ!ほ、ほら、真央が待っているかもしんないし」
「ユウキーー。どこ行ったのかな……。ユウキーー」
 言った側から洗面所の外から真央の声が聞こえる。
「ほ、ほら。真央が待ってるだろ。早く出ろ」
「分かったわ」
「健君。ユウキ知らない?――って、あんた何してんのよ!こんなところに女の子連れ込んで!」
 真央が、洗面所に入ってきた。
 そして、ユウキの姿を見るや否や、俺を怒鳴りつけた。
「ち、違うんだ!」
「違くないでしょ!最低ね!ほら、ユウキ行くわよ」
 真央が顔を真っ赤にして怒鳴りつけてくる。
「健は悪くないわ」
 ユウキが真央に引っ張られてもその場を動かない。
「どうして?」
「あたしが入ったからよ」
「な……、どうして?」
「聞きたいことがあったの……」
 真央は、何が何だか分からないって顔をする。
「いい?ユウキちゃん。男の人が入っているお風呂には入っちゃいけないの。分かる?」
 困惑した真央はまるで子供を相手にするかのように説教する。
「健に教えてもらったわ」
「そ、それなら早く出ましょ」
「そうするわ」
「変なことしてないでしょうね?」
 真央がこっちを睨みつけてくる。
「し、してねぇよ」
「まあ、今回は許してあげるわ。未遂でね!」
「み、未遂ってなんだよ!何も考えてないっつーの!」
 ユウキが助けてくれなかったらやばかったな……。
 ――って、そもそもユウキが悪いのだけど。
 真央とユウキが風呂から出ていく。
 ――焦ったあぁ。
 エロいこと考えていたとか、口が裂けても言えないわ……。
 
 風呂から上がって寝室に入り、久しぶりに図書館に入ることを決意した。
 三か月ぶりくらいだろうか。今回の発表で最後にして封印しようと思っていたのに……。
 図書館に入り、医療関係の本を漁って三時間ほどでユウキの症状と類似した病気に関する文献が見つかった。

 ――――病名は『アルビノ』
 この病気は、主に動物や植物に先天的症状をもたらす。
 症状はメラニンの生合成に使用をきたす遺伝子疾患。
 ――体毛や皮膚、虹彩の色が薄いこと。
 ――皮膚で紫外線を遮断できず、紫外線に対する耐性が極めて低いこと。
 しかし、魔法使いや人間にこの病気の患者は今までに確認できていないという……。
 これらの大半はユウキの症状と、ぴったり一致していた。
 ――治療方法だが、ギリストは人間から抽出したメラニンを魔力で疾患している動物や植物に合成することで、メラニンが体内に定着し、紫外線に対する耐性は通常まで回復すると書かれていた。
 
 図書館から出て、時計を見ると五時半をさしている。
 ――――六時半にみんなが起きてくるので今から寝てもなあ。
 そう思い俺は、もう必要なくなった、ユウキの血液検査の結果を取りに行くことにした。
 ――検査室の扉を開け、検査器を取り出すと……。
「う、嘘だろ……」

 ――――――俺は思考停止した。
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