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③
しおりを挟むこれまで回っていた仕事が回らなくなった。
一番厄介なのが書類だ。
最初は問題ないと思っていた。
エリーゼの仕事は簡単な雑務だろうと思っていた。
王太子妃の仕事の大半。
公に出るのがアラクネでエリーゼは裏方に徹底していたのだからたいした量ではないと思っていた。
なのに――。
「陛下、先日の書類に不備がございました。こちらもこのままでは案件を通すことはできないと」
「何だと?」
「後は、こちらの予算の見直しと、老朽化の進んでいる神殿が二日前に崩壊した所為で怪我人が続出しました」
「それは後にしろ!」
「ジルコニア帝国から早急に謁見の話が!」
「少し待て!」
仕事の量が半端ではなかった。
特に問題だったのは会計報告にかんするものだ。
計算の間違いから始まり。
戦後の復旧活動をしなくてはならないが国庫が破産寸前だった。
税金を上げようにも既に国民は限界を達していた。
王都内では暴動が起きて騎士を派遣するも騎士自体も疲弊しているので人数が足りない。
それだけではなく同盟国に防衛を頼もうとしたがその見返りに領土と金を要求されたのだ。
そんなことができるはずがない。
領土を差し出せとと言われて、頷けばどうなるか。
国を乗っ取られる可能性もあるのだ。
「何故だ。これまでは友好的な国が」
「表向き友好でも、内心ではそうとは限りませんからな」
腹の探り合いをしていた時期もあったが、戦争時。
魔王軍の所為で人類は滅亡するかもしれない瀬戸際だったので各国は同盟を結んだ後に防衛ができな国を軍事国家が守ってくれた。
その見返りに金銭的だったり食料や薬草を援助していた。
我が国もできる限りの事はしたが、他の国ほどの援助ができなかった事で非難を受けた。
そこでエリーゼの薬草学を提供することと戦後の後に援助をすることで納得してもらった。
しかしいざ戦争が終わるや否や、国庫がほぼ空っぽの状態だった。
金だけならばまだいい。
戦争中は協力的だった商人も反旗を翻し、王家に援助した金を返せと言い出す始末。
国民が王家の為に尽くすのは当然なのに、それを突っぱねたら今度は、物資の流れを止めて来たのだ。
隣国と繋がりのある商人を罰することは危険だった。
何よりあちらは戦時中の援助という約束を表に出して、金銭的にも厳しいのを知りながら当時担保にしていた領土を差し出せというのだ。
そんな真似はできないと何度も言った。
代理人を立てたら今度は後ろ盾になっている貴族が隣国と共謀して王家は約束を違えるなど吹聴する始末だ。
おかげで悪い噂が流れた。
なんとかしなくてはならないのに!
「アラクネは…王妃はどうしているんだ!」
「王妃陛下は来月から聖地巡礼に向かう準備を」
「そんなもの後回しだ!聖女の仕事など必要ない!」
聖女の仕事なんて王妃なったのだから必要ない。
もう魔王軍はいないのだから。
今すべきことは国を立て直し、心が離れた同盟国を取り戻すことだ。
いや、それよりも先に不満を持つ国民をなんとかしくてはならない。
それも全部王妃の仕事だろう?
「しかし陛下、聖女の仕事を放棄しては他の聖教皇国に何と言われるか…ただでさえ、聖女という制度を良く思わない聖職者もいるのです」
「放っておけ!あんな寄生虫に何ができる。祈るだけしか能のないできそこないが」
「陛下…」
そうだ。
祈りなんて意味がない。
神に感謝しても何ができる?
魔物に襲われた村を救えるのか?
民を救えるのは優れた王だけだ。
盤石な王政こそがすべてを救うんだ。
その王政を築き上げるのがこの私だ。
どいつもこいつも何故解らない!
何一つとしてままならない私は手詰まり状態で側近にも当たり散らすような真似をしていた。
それでも国を思えばこそだからこそ、許されると思っていた。
だから気づかなかった。
人の心とは弱く、絶対なんてものはないのだと。
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