寵妃にすべてを奪われ下賜された先は毒薔薇の貴公子でしたが、何故か愛されてしまいました!

ユウ

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4聖なる地へ

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王宮の正門ではなく裏門から出る形になった。
誰も出迎えもなく、私の存在を早く無くしてしまいたいのだと嫌と言う程解った。
早朝の時間だったこともあり出迎えもなく私は馬車で国を出て王都を過ぎて国境を出て行く。


ここを過ぎれば本当にこの国から出る形になる。
何の未練もないのに何所か寂しいと感じる私だったけど――。




「妃殿下!」

「エリーゼ様!」


誰かに名前を呼ばれた気がした。
振り返るとそこには辺境伯爵の皆さんが花を持っていた。

花を空に投げ、まるで私の門出を祝うように。


「これより、私達の花魔法でお見送りいたします」

「エリーゼ様の未来に幸あらんことを!」

杖を掲げるのは王立師団の魔術師見習いの子達だった。
彼らは平民で、この度の戦争で戦ってくれた孤児達だった。


「どうして…」


私は一人だと思ったのに…


「貴女は一人ではなかったはずだ」

「アルバシア様…私」

王宮内には味方はいなかった。
アラクネ妃が王宮に入ってから辺境伯爵や、神官様からも引き離されてしまった。
祖国から一緒に連れて来た侍女も、同様だった。


慈善事業の一環として関わった魔法使いの見習いの子達もそうで。


「私の為に」

「貴女の蒔いた種はちゃんと芽をだしていたんだ」


戦争で家族を奪われた子供たちに私は何もできなかった。
手紙と食べるものを送るぐらいしかできない無力な王太子妃だったのに、私が国を出るのを祝ってくれている?



「エリーゼ様!忘れませんから」


「このご恩は絶対に…どうかお幸せに!」

「エリーゼ様万歳!」



小さな魔法だった。
だけど私にとっては奇跡の魔法だった。


あたり一面を花畑にして、花びらが舞っている。


「これは、ハイビスカス…」


私の手に落ちて来たのは色鮮やかなハイビスカスだった。
マリンパレスの象徴となる花で私の大好きな花だ。


「エリーゼ様!どうかお元気で!」


最高の花向けだわ。
こうして私を思ってくれる人がいたことを知ることができて嬉しくなる。

私はあの子達に何もしてあげられなかった。

でも、こうして絆は切れてなかった事を心から嬉しく思った。



「姫さんモテモテだな」

「ああ、彼女は間違いなくこの国の花であり、王妃だったのかもしれないな」


最後の贈り物に喜ぶ私は彼らの言葉を聞いていなかった。

国の花という言葉の意味も最後の王妃という言葉の意味を理解することはできなかった。


「皆さん!どうかお元気で!」


私は馬車の窓からただ声を張り上げ、唯一ある魔法を使った。
聖女様のような強大な魔法じゃない。

結界を敷く魔力もなければ、魔物を滅する強力な炎の魔法でもない。


「恵みよ、彼の者に祝福を」


水魔法だった。
お礼代わりに水魔法でシャボン玉を作り、その中には私が作ったポーションが入っている。

上級ポーションとまではいかないけど、粗悪品の薬草よりも効果があるはずだ。

せめてあの子達が怪我をした時に手助けとなるように。


「水の女神、アクアレーナ様。どうか皆に貴女様の加護を」


祖国を守りし恵みと癒しの女神のアクアレーナ様に祈りを込める。


あの子達の行く末が幸福でありますように――。




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