俺の婚約者は侯爵令嬢であって悪役令嬢じゃない!~お前等いい加減にしろよ!

ユウ

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序章.始まりの前奏曲

12.保湿




屋敷の外装は豪華で身構えていたけど、テレシア様の部屋は思ったよりも豪華ではなかった。

それでもお母様の部屋よりも広く豪華だけど、ただ派手というわけではなく品がある。

「わぁーノワールの絵画に、この美術品はミシュラン像ですか?」

「まぁ、エリオル様は美術品に詳しいのですね」

「いえ、本でしか見たことがありません」

外に出ることはほとんどなく視察にも俺は同行させてもらえないので美術品はすべて屋敷にある物か本で見る程度だった。


「初代国王陛下が聖なる杯を平和の象徴にされて以来、聖杯は国の宝となっていた代物で…すごい」

なんて美しい形に芸術的なんだろうか。
俺は前世で薬草師をしながらも店を営む立場として茶器が好きだった。

陶器も趣味で美術館に何度も通っていた程だが、少し凝視しすぎたかもしれない。


「申し訳ありません。無作法に」

「いいのですよ。価値を解ってくださる方に見ていただければ喜ぶでしょう」

なんて優しい人なんだ。
不躾に美術品を食い入るように見ていた俺に好きに見ていいと言うんなんて。



屋敷ではまず。



『素手で触らないように。汚れますから』

『不要に見ないように、間違っても盗まれては困りますので』


まずこう言われていた。
別に盗む気は無いけど、眺めるのも咎められてしまった。


「あっ、あの…もっと近くで眺めていいですか?絶対に触れませんので」

「まぁ、触ってくださってもかまいませんのよ?」

「いいえ、この絵画は大変貴重な品ですし、失礼です」

きっとこの絵画はテレシア様にとって大切な物だと思う。

額縁には埃がまったくなく美しく磨かれている。
よっぽど思いれのある品に違いないのに安易に触れてはいけない気がした。


「エリオル様はお優しい方ですわね」

「え?」

「この絵画は私の父が嫁入りの時にプレゼントしてくださったのですわ」


この絵画一つでどれだけの金額がするか解らない。
いやお金の問題点ではないかもしれないけど、こんな大事な品を俺に見せていいのだろうか。

「良かったのですか?こんな貴重な品を私に見せて」

「ええ、価値の解る方に見ていただいた方が嬉しいですわ」

テレシア様は女神様のように美しい人だった。
うん、お母様と張れるほどの美しさと気品を兼ね備えた人だ。


一番はお母様だけどね。


「テレシア様?」

「何かしら」


微かに見えたテレシア様の手を見てすぐに気づく。

「失礼ですがお手を」

「あっ…」

「肌が赤くなっております。よろしければどうぞ」


鞄から取り出したのは化粧水ローションだった。
ただし貴族の女性が使うのとは違い保湿を重視した薬用化粧水でもある。

「これは?」

「失礼しますね」

赤くなった肌を見るとかなり荒れている。
肌が元から弱いこともあるけど食事や環境によるもので肌が荒れてしまっているのかもしれない。


「気持ちいいわ」

「それは良かった」

コットンに化粧水を湿らせ、肌に塗って行く。
その後に保湿を閉じ込めるクリームも忘れずに塗って行く。

一度だけではそこまでの効果はないけど、荒れた肌を保湿するぐらいはできるはず…


「えっ‥」

「なっ、何だ!」


テレシア様の腕が光り出した。


「こっ、これは!」

さっきまで皮膚が荒れていた場所が綺麗になって行き、傷一つ無くなって潤いたっぷりのお肌になっていた。


嘘だろ?
旦那様と言い、テレシア様と言い。


なんて回復能力なんだ。


もしかしてこの人達はすごい魔力を持っているのではないだろうか。



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