14 / 237
序章.始まりの前奏曲
12.保湿
屋敷の外装は豪華で身構えていたけど、テレシア様の部屋は思ったよりも豪華ではなかった。
それでもお母様の部屋よりも広く豪華だけど、ただ派手というわけではなく品がある。
「わぁーノワールの絵画に、この美術品はミシュラン像ですか?」
「まぁ、エリオル様は美術品に詳しいのですね」
「いえ、本でしか見たことがありません」
外に出ることはほとんどなく視察にも俺は同行させてもらえないので美術品はすべて屋敷にある物か本で見る程度だった。
「初代国王陛下が聖なる杯を平和の象徴にされて以来、聖杯は国の宝となっていた代物で…すごい」
なんて美しい形に芸術的なんだろうか。
俺は前世で薬草師をしながらも店を営む立場として茶器が好きだった。
陶器も趣味で美術館に何度も通っていた程だが、少し凝視しすぎたかもしれない。
「申し訳ありません。無作法に」
「いいのですよ。価値を解ってくださる方に見ていただければ喜ぶでしょう」
なんて優しい人なんだ。
不躾に美術品を食い入るように見ていた俺に好きに見ていいと言うんなんて。
屋敷ではまず。
『素手で触らないように。汚れますから』
『不要に見ないように、間違っても盗まれては困りますので』
まずこう言われていた。
別に盗む気は無いけど、眺めるのも咎められてしまった。
「あっ、あの…もっと近くで眺めていいですか?絶対に触れませんので」
「まぁ、触ってくださってもかまいませんのよ?」
「いいえ、この絵画は大変貴重な品ですし、失礼です」
きっとこの絵画はテレシア様にとって大切な物だと思う。
額縁には埃がまったくなく美しく磨かれている。
よっぽど思いれのある品に違いないのに安易に触れてはいけない気がした。
「エリオル様はお優しい方ですわね」
「え?」
「この絵画は私の父が嫁入りの時にプレゼントしてくださったのですわ」
この絵画一つでどれだけの金額がするか解らない。
いやお金の問題点ではないかもしれないけど、こんな大事な品を俺に見せていいのだろうか。
「良かったのですか?こんな貴重な品を私に見せて」
「ええ、価値の解る方に見ていただいた方が嬉しいですわ」
テレシア様は女神様のように美しい人だった。
うん、お母様と張れるほどの美しさと気品を兼ね備えた人だ。
一番はお母様だけどね。
「テレシア様?」
「何かしら」
微かに見えたテレシア様の手を見てすぐに気づく。
「失礼ですがお手を」
「あっ…」
「肌が赤くなっております。よろしければどうぞ」
鞄から取り出したのは化粧水だった。
ただし貴族の女性が使うのとは違い保湿を重視した薬用化粧水でもある。
「これは?」
「失礼しますね」
赤くなった肌を見るとかなり荒れている。
肌が元から弱いこともあるけど食事や環境によるもので肌が荒れてしまっているのかもしれない。
「気持ちいいわ」
「それは良かった」
コットンに化粧水を湿らせ、肌に塗って行く。
その後に保湿を閉じ込めるクリームも忘れずに塗って行く。
一度だけではそこまでの効果はないけど、荒れた肌を保湿するぐらいはできるはず…
「えっ‥」
「なっ、何だ!」
テレシア様の腕が光り出した。
「こっ、これは!」
さっきまで皮膚が荒れていた場所が綺麗になって行き、傷一つ無くなって潤いたっぷりのお肌になっていた。
嘘だろ?
旦那様と言い、テレシア様と言い。
なんて回復能力なんだ。
もしかしてこの人達はすごい魔力を持っているのではないだろうか。
あなたにおすすめの小説
処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!
秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。
民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。
「おまえたちは許さない」
二度目の人生。
エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。
彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。
1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。
「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」
憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。
二人の偽りの婚約の行く末は……
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
真実の愛を見つけた婚約者(殿下)を尊敬申し上げます、婚約破棄致しましょう
さこの
恋愛
「真実の愛を見つけた」
殿下にそう告げられる
「応援いたします」
だって真実の愛ですのよ?
見つける方が奇跡です!
婚約破棄の書類ご用意いたします。
わたくしはお先にサインをしました、殿下こちらにフルネームでお書き下さいね。
さぁ早く!わたくしは真実の愛の前では霞んでしまうような存在…身を引きます!
なぜ婚約破棄後の元婚約者殿が、こんなに美しく写るのか…
私の真実の愛とは誠の愛であったのか…
気の迷いであったのでは…
葛藤するが、すでに時遅し…
妹が私の全てを奪いました。婚約者も家族も。でも、隣国の国王陛下が私を選んでくれました
放浪人
恋愛
侯爵令嬢イリスは美しく社交的な妹セレーナに全てを奪われて育った。
両親の愛情、社交界の評判、そして幼馴染であり婚約者だった公爵令息フレデリックまで。
妹の画策により婚約を破棄され絶望するイリスだが傷ついた心を抱えながらも自分を慕ってくれる使用人たちのために強く生きることを決意する。
そんな彼女の元に隣国の若き国王が訪れる。
彼はイリスの飾らない人柄と虐げられても折れない心に惹かれていく。
一方イリスを捨て妹を選んだフレデリックと全てを手に入れたと思った妹は国王に選ばれたイリスを見て初めて自らの過ちを後悔するがもう遅い。
これは妹と元婚約者への「ざまぁ」と新たな場所で真実の愛を見つける物語。
【完結】お父様。私、悪役令嬢なんですって。何ですかそれって。
紅月
恋愛
小説家になろうで書いていたものを加筆、訂正したリメイク版です。
「何故、私の娘が処刑されなければならないんだ」
最愛の娘が冤罪で処刑された。
時を巻き戻し、復讐を誓う家族。
娘は前と違う人生を歩み、家族は元凶へ復讐の手を伸ばすが、巻き戻す前と違う展開のため様々な事が見えてきた。
妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。
バナナマヨネーズ
恋愛
四大公爵家の一つ。アックァーノ公爵家に生まれたイシュミールは双子の妹であるイシュタルに慕われていたが、何故か両親と使用人たちに冷遇されていた。
瓜二つである妹のイシュタルは、それに比べて大切にされていた。
そんなある日、イシュミールは第三王子との婚約が決まった。
その時から、イシュミールの人生は最高の瞬間を経て、最悪な結末へと緩やかに向かうことになった。
そして……。
本編全79話
番外編全34話
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
王子、おひとり様で残りの人生をお楽しみください!
ちゃっぴー
恋愛
「ラーニャ、貴様との婚約を破棄する!」
卒業パーティーの真っ最中、ナルシストな第一王子ウィルフレッドに身に覚えのない罪で断罪された公爵令嬢ラーニャ。しかし、彼女はショックを受けるどころか、優雅に微笑んで拍手を送った。
なぜなら、ラーニャはとっくに王子の無能さに愛想を尽かし、この日のために完璧な「撤退準備」を進めていたからだ。
お言葉を返すようですが、私それ程暇人ではありませんので
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<あなた方を相手にするだけ、時間の無駄です>
【私に濡れ衣を着せるなんて、皆さん本当に暇人ですね】
今日も私は許婚に身に覚えの無い嫌がらせを彼の幼馴染に働いたと言われて叱責される。そして彼の腕の中には怯えたふりをする彼女の姿。しかも2人を取り巻く人々までもがこぞって私を悪者よばわりしてくる有様。私がいつどこで嫌がらせを?あなた方が思う程、私暇人ではありませんけど?