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第二章.婚約者は悪役令嬢
30.秀才の苦労
思えば、周りにチートがいたら委縮しても仕方ない。
何せ兄があの天才で従妹が完璧主義のツンデレ令嬢だからグレたくなるだろうな。
でも、レントン殿下は噂程悪い人じゃない気がした。
演奏した時も、良いものは良いと評価できると言うことはちゃんと人の話に耳を傾けられる人だ。
「おい、何だその目は!」
「レントン殿下…」
「何故そんな温かい目で見る!気色悪い」
そうなるとこの人ももしかしたら素直になれないだけではないか?
もしくは俺に良い感情を抱いていないのはウィルフレッド様への劣等感と対抗意識の表れではないか?
「なんて可愛い人」
「はぁ!」
そう思うと、何だから憎めないと思った。
「レントン殿下、貴方は素直じゃなかっただけなんですね!私は貴方を誤解してました」
「だから何の話をしているんだ!前から頭のネジが緩んでいると思ったが…」
はい、そこで痛い人間と思わないでください。
俺は至って冷静だし、ネジだって緩んでいませんからね!
「偉大過ぎる兄に委縮するのは当然です。あの馬鹿殿は…とにかく人の神経を逆なでする天才で…」
「ああ、あの腹黒は他人が数か月かけて修得するスキルを一瞬で習得する」
「他人から見れば賛美するでしょうが、された側からすればどれだけ傷つくか」
「そうだ!あのクソ兄貴!こっちがどれだけ苦労してもすました顔であっさりと!!」
思えば彼の小姓になってから苦労の連続だった。
俺の場合は自尊心を弟にズタズタにされて来たから色々麻痺している。
前世でも現世でも…
だから自尊心が高い人にからすれば相当キツイはずだ。
「俺が必死で習得した薬草の知識は3日で習得されました。俺は数年かかった努力は池の中にドボンです」
「お前もか…俺も小さい頃から音楽だけは負けまいとして来たが…あの馬鹿兄貴は一瞬で習得しやがった。どうせ俺は兄貴のオマケ…出涸らしだ」
「あの人が化け物なんです。いや、天才ってそういうもんなんですかね?」
思えばマルスも天才肌だった気がする。
だからなのか、周りと歩調を合わせることができなかったように思える。
「お前、弟に廃嫡まで追い込まれていたのに…平然としていたな」
「そうせざる得なかったんですよ。俺の場合…」
既に一人称が俺となってしまったがこの際いいや。
「俺はスキルがしょぼいらしくて、その所為で母が形見の狭い思いをして来ました。正妻なのに側妻に立場を奪われ…その癖領地代行の仕事は全部母に押し付けられ…あげく使用人からも見下されて」
「何‥そうだったのか?」
「ええ」
遠い目をして過去を思い出す。
忘れることができない幼少期は後悔ばかりだった気がする。
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