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56.兄と弟
しおりを挟む部屋に入り、安堵した表情を浮かべるクレイル殿下。
「兄上…」
「ルゴニス!」
直ぐにルゴニス様を抱きしめ涙を流した。
本来ならば、人前で感情を出す事は許されないが今は俺達しかいない。
「許せ…不甲斐ない兄をどうか」
「兄上!」
「私が弱いばかりに、非力だった所為でお前をこんな目に」
全ての経緯は既に知っている。
最初からアルゴニス様の行動に疑問を感じていらしたのだから、思う所はあったのだろう。
「ご無事で本当に良かった」
「エラノーラ様」
「もう姉とは呼んでくれませんの?」
「ですが…」
廃嫡となった身では兄と呼ぶことはできないと思っているようだが。
「ご心配ありませんわ。廃嫡と宣言されても正式は手続きは終わってません。何よりまだ王族の席におられますわ。敵には少々細工しましたの」
「エラ…君って人は」
「第一、廃嫡する程の罪ではございませんわ」
確かに通常ならば謹慎処分か重くても王位継承権を剥奪する程度だ。
辺境地に追いやるのはあまりにも厳し過ぎると思ったが、そこに裏があったのだ。
「王都にいれば危険があるので王妃陛下はあえて辺境地を選んだのです。そこで地位を得ていただくべく」
「では最初から…」
「王妃陛下の考え全ては存じませんわ。ですが、ルゴニス様を信じていらしたのでしょう。深い事情があると…そうでなくては縁を切ってますわ」
「義姉上…」
泣くのを耐えていたルゴニス様はようやく泣けたのだろう。
ずっと耐え忍んでいたのだ。
「初めてお目にかかりますわローゼ嬢、エラノーラと申します」
「あっ…お初にお目にかかります。私はローゼ・ルーティンと申します」
「ローゼ?」
か細い声で囁いだエラノーラ様は何を考えこんでいた。
「いかがなさいました?」
「いいえ、何でもありませんわ。すべてはユーリ殿下より聞いております」
気のせいか?
エラノーラ様がローゼ嬢を見る目が少し変だと思ったのだが。
「とにかく、お二人の身はこちらでお守りします。当日も護衛をつけますので、少々不便をおかけいたしますがお許しください」
「アイリス様、そのような…」
「両陛下もお二人にお会いしたいとおっしゃっていたのですが…」
現段階で二人と合わせるのは危険だった。
できるだけ敵の目を欺かなくてはならないのだから。
「お二人には変装していただきます。帝国の貴族として…」
「一番安全な方法ですので」
全てが終わった時、二人はどうするのだろうか。
二人は今のままでも幸せなのであれば、そっとしておくべきか。
それとも王都に戻りたいならできるだけ協力したいとも思っているが、どうすべきか。
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