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第一章
9再会
しおりを挟むまさか本当に婚約者の入れ替えをすることになるなんて。
「最初は辺境地に住まう姫君を選ばれたのです」
「ですが、殿下の拒絶反応が酷く。当人も顔合わせをする前に嫌がられまして」
「一国の王太子殿下をですか?」
普通は無理だろうと思うが、そこには理由があった。
「殿下も配慮をされて、正式な申し込みの前に交流をされたのです」
「魔力を封じて、少し変装をしてですが」
「ですがあの小娘!殿下の容姿だけでなく趣味までも侮辱する始末です!仮初であろうとあんな非常識な女が婚約者などありえません!」
ラリシア…。
一体何を言ったのか。
「殿下も努力なさっております。先月も辺境地の舞踏会に参加していたのですが」
「先月?」
「ええ、とある子爵家の舞踏会です」
私も参加した舞踏会だ。
まぁ、壁に花でダンスも踊らなかったけど。
そう言えばあの人はどうしているだろう?
壁の花である私を気遣って傍にいてくれた優しい男性はどうしているだろうか。
「さぁ、どうぞ」
「はっ…はい」
いけないわ。
今から王太子殿下に対面するのに他の男性の事を考えていては。
「ようこそお越しくださった」
「はい」
「顔を上げて欲しい」
優しい声だった。
だけど、この声は聞いた事がある。
顔を上げるとそこには。
舞踏会で偶然出会ったあの方だった。
「アリアドネ嬢」
「はっ…はい」
「この度は無理を言ってすまない」
「王太子殿下ともあらせられる方が頭を下げてはなりません。どうか」
なんとの地位もない私が王太子殿下に頭を下げていただくなんて恐れ多い。
「殿下…」
「シリウス・エレンフリートだ」
あの時見た時と同じ美しい黒髪に魅せられる。
「アリアドネ・クライアでございます」
「この場にいる者は俺の側近だ。気を使わないでくれ…それよりも今回は手荒な真似をしてすまなかった」
「え?」
手荒な真似って何?
「アトラスに無理を言ったからな…その見返りに出来るだけのことはするつもりだ」
「そんな!私達は国の為、王家の為に尽くすのは当然でございます」
これは嘘じゃない。
辺境貴族は王家の盾となり剣となる存在だった。
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「そうか…」
「ですが、王都に来ることができた事は私にとっても幸いであります」
「ならば良かった。君には随分失礼な事を頼んでいる自覚がある。だが俺を見ても平常心を保つ事ができ、尚且つ忍耐力の強い君ならばと思ったんだ」
「殿下、失礼ですよ」
「うっ…悪い意味ではないんだ。それに婚約者に蔑ろにされているならば…一時でも私の婚約者になればと思ったんだ。勿論君に傷がつかないようにするつもりだ」
レオナルド様のおっしゃる通り立派な方だわ。
なのに生まれ持った能力の所為で好きでもない女性を魅了してしまうなんて気の毒だわ。
「精一杯務めさせていただきます。殿下の盾となります」
「ん?」
喜んで殿下の壁になります!
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