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スーザンメーヤは教育に命を懸ける女性だった。
特に次世代の淑女を育成する事こそが自分に与えられた使命とさえ思っていた。
女だてらに学問を究め侍女として王宮に務めた後に王妃の傍仕え侍女として選ばれたのだ。
実力だけでのし上がったいわば、下剋上を果たした女性だった。
平民であった事で嫌がらせも受けても、教育者として評価されて来たスーザンは多くの淑女を世に送り出す事を生きがいにしていた。
「私はヴィオレット様以外でここまで優秀な方は初めてですわ。お二人は互角ですわね」
「えっ…」
「何という事でしょう。こんな忍耐強く努力かな方ならば、きっと将来は淑女の鑑になりますわ」
シェリラは胸がジンと熱くなるのを感じた。
あの日の事を思い出す。
『シェリラ様、どうか努力してください』
『はい…』
『淑女とは生まれ持った才ではなく技術と同じ。貴女が完璧な所作を得たのは時間と努力故です。いずれ貴女を支える財産となります』
出来て当たり前、できなければおかしい。
上手く行くない淑女教育に苦戦した時期にスーザンに厳しく言われたのを思い出す。
――変わらないわ。
今にして思えば表立った庇ってくれたのは三人だけだったが、陰から見守り支えてくれた人はいたのだ。
自分の殻にこもっていて気づかなかっただけかもしれない。
「先生、もっと教えてくださいませ」
「お嬢様」
「私は自分の為に淑女教育を受けたいんです。誰かの為ではなく」
あの時の自分は誰かのためにしか頑張らなかった。
だけど、それは違うんじゃないのか。
勉強は誰かに言われてするのではない。
淑女教育も同じではないか。
「私は自分の為にマナーを覚えたいんです。誰の為でもなく自分の為に」
「シェリラ?」
ミレアルが唖然とした表情をするが…
「素晴らしい。そうです。殿方や夫の為に女性は淑女教育を受けるのではありません。自分自身の為に身に着けるのです!」
「先生…」
「私の思いを受け継いでくださる方がいらして嬉しいですわ」
シェリラの手を握り涙ながらに受け入れる。
「お任せください。真の淑女とは殿方の一歩後ろを歩くのではありません!新時代を切り開く方こそが真の淑女ですわ!」
「えっ…あの、先生。娘は完璧な王太子妃に…」
「いいえ、一人の女性として自立した考えをもっていただかなくては!今の社交界はマナーの意味を理解していませんわ!」
「えっ…あの」
「私にすべてお任せください!」
押しの強いスーザンは遠回しに遠慮するミレアルの言葉など聞こえていなかった。
何より、ライオネルが無理を言って家庭教師を頼んだのに逃げ出したミレーヌは謝りにも来ないので強く言えなかったのだった。
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