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第二章
14.兄の思い~レイモンドside②
公の場で婚約者を無視する行動をしたエイミールは悪びれることはなかった。
壁の花にされたアリアを誰も庇おうとしなかったことを後から知り、幼馴染を優先させ過ぎた事で、不名誉な噂を流されてしまった事を聞かされた。
ただし、現段階では噂にすぎずないのでエイミールが浮気をしている確信は持てなかった。
元より病気の私を看病する優しいアリアの事だから気を使っているのだろうとも思ったし、領地で引きこもっている幼馴染を心配する気持ちは解る。
だが、誕生日や祝い事の時までもアリアを放置する事は許せなかった。
故意的にアリアを蔑ろにしているのではないか?
しかしエイミールは一切の悪気がないと言う始末で、あげくの果てに私が妹に干渉し過ぎるとまで言われてしまった。
妹を案じて何か悪いのか。
一番許せないのは公爵家の問題に口を挟んだエイミールや侯爵夫人の事だ。
いくら婚約関係にあろうとも、まだ結婚しているわけではない。
なのに、母の事まで言うなんて許せない。
「許せない…」
ハント侯爵家に対する憎しみが強くなる一方で、ストレスを抱えれば私の病は体を蝕んで行く。
無力であることが悔しくて、病床に臥すことが増えたが。
ただ黙って見ているつもりはなかった。
貴族の婚姻は色恋沙汰ではなく利益の追求でもある。
アリアががエイミールの婚約者になったのは、政治的理由もある。
しかし、ハント侯爵家は皇族に反旗を翻そうとしている事実を掴むことさえできれば婚約を解消できる。
こちらに何一つ非がない状態で彼等が悪い事を前提とした婚約解消をすればアリアに傷は最小限で済むだろう。
並行してアリアに手紙を送り、なんとか元気づけようと思った。
ここでハント侯爵家がアリアを蔑ろにしていると言ったとしても困惑させるだけだ。
何よりハント家の医師が私の主治医である以上は、強く出れないのだ。
それに、ジョバンナ妃の耳に入ればどんな目に合うか解らないので下手行動はとれなかった。
だが、私が贈ったドレスはアリアに届く事はなく。
リーナにそれとなく尋ねると、私の贈ったドレスは何故かあの自称病弱娘が着ていた。
「どういうことだ…ゴホッ!」
「レイモンド様!興奮してはなりません」
「ばぁや…何故私が贈ったドレスが!」
アリアの為に用意したドレスをあの女が着ているのか。
そして、型崩れしたドレスを着せられるアリアを見て唖然とした。
「解りません…確かにお嬢様に届けさせたはずです。なのに!」
「我がセレンティア家への侮辱か…そうか」
医師を紹介してくれた恩があった。
しかし、私の病は一向に良くなることはなく、領地から出ないように言われていた。
だから時々まさかと思ったんだ。
私が帝都に行くことを阻止していたとなれば状況は変わって来る。
「ばあや、一刻も早くマミーを呼び出せ」
「マミーをでございますか?」
「ボビーもだ。これ以上悠長な事は言っていられない…ハント侯爵家を潰す」
私が馬鹿だった。
奴等はアリアを傀儡にしているだけでなく、矜持を傷つけ意のままに操ろうとしている。
いくら姉が皇帝の側妃だからと言って許されることではない。
父の帰還を待つ前に私はハント侯爵家を潰す決断をした。
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