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番外編~転落した者達
閑話.とあるお針子の事情②
味方の二人が邸を辞めた後に噂が流れた。
二人は無理な命令に逆らい解雇されたのだと。
辞めた者を面白おかしく言う者は多かったが、あの二人はハント侯爵にやとわれたので何かとガーナと衝突があったのは否めないが、あくまで雇い主はガーナではないのだ。
にも拘らず邸を追い出された。
それ以降は、ユナの立場が日に日に酷くなる一方だった。
辞めたくても辞めることはできず、逆らうこともできない日々が続いた。
今日も掃除をしていると、誰かに声を掛けられた。
「掃除をありがとう」
「あっ…申し訳ありません!」
別館の一番奥の小さな部屋の主だった。
「何時も綺麗に掃除をしてくださったありがとう。お花も綺麗に飾ってくださって」
「とんでもございません。私が遅い所為で…」
「私が部屋に戻ると何時も綺麗に掃除がされていてすごく気持ちが良いわ。お花も大好きなの」
話しかけてくれたのは、アドリア―ナだった。
エイミールの婚約者でありながらも虐げられ、酷い扱いを受けていると噂では聞いていた。
役立たずで形だけの婚約者。
エイミールには相応しくないと酷い言われようで使用人も見下されている。
気品の欠片も、貴族令嬢としての美しい振る舞いもできず、シャロンとは月とスッポンと言われていたが、ユナからすれば真逆だった。
――なんて美しい漆黒の髪。
溜息が出る程美しいと見惚れてしまった。
「ユナ?」
「はっ…申し訳ありません」
シャロンとは異なり柔らかい印象を受け、清楚で可憐だとも思った。
気品がないなんて信じられない。
所作は静かで美しく、質素なドレスも美しく着こなしているように見えた。
「あの…そのドレス。リボンはどうされてるのでしょうか…あっ、いいえ!失礼しました!」
根っからのお針子体質のユナは変わったデザインのドレスには敏感だった。
シャロンが着ているドレスはコルセットで胸を強調させボリューム感のあるドレスを着ているが、アドリア―ナはコルセットは使わないドレスを着ていた。
「いいのよ…少し地味だけど」
「いいえ、すごく素敵です。このドレス…もう少しレースを使ったら体系も隠せますし。どんなに素敵か」
「私は身長があるから…」
ユナはこの邸に来て初めてウキウキした。
アドリア―ナはユナが知らない裁縫を知っており色んな事を教えてくれた。
相手は雲の上の存在であるのに威張ることなく本当に優しかった。
だからこそ解らなかった。
何故こんな離れに追いやられるのか、どうして皆悪く言うのか。
疑問を抱く中、ユナは僅かな時間にアドリア―ナと話せる時間に幸福を感じていた。
しかし…
「ユナ、そのお茶は一つ多いわ」
「え?」
「お茶はあの女に要らないわ。出すなら出涸らしでも出しなさい」
「何故ですか?アドリア―ナ様はエイミール様の婚約者で…」
「下女が口答えするんじゃないわよ!あの女はどうせお飾りよ。結婚したら捨てるんだから…エイミール様が公爵家の跡継ぎになれば何処かに売り飛ばす予定よ」
シャロンの傍仕えをしている侍女が告げた言葉に絶句し、ユナは身動きが取れなくなった。
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