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番外編~転落した者達
閑話.とあるお針子の事情③
社交界ではシャロンとエイミールのロマンスが流れ始め、アドリア―ナは二人の仲を引き裂いた悪女扱いで邸でも酷い扱いをしていた。
「ユナ!勝手にまたあの女にお菓子を出したのね!」
「ですが…」
「口答えをするんじゃないわよ!」
三人ではお茶をする時もアドリア―ナだけお菓子がない事もあり、ユナはこっそりお菓子を出したりして叱られるも、アドリア―ナが余りにも気の毒で自分で作ったお菓子等を出していた。
シャロンの傍付き侍女にその都度叱られ、水を掛けられたり階段から突き飛ばされそうになることも多かった。
酷い時は給金を減らす様に告げ口されたり食事を抜かれるのは日常茶飯事となった。
「ユナ…どうしたの」
「薪を運ぶ途中に転んでしまって」
「でも…」
侍女がすべきではない仕事もさせられるようになり、毎日へとへとだったがアドリア―ナに心配をかけまいと笑っていた。
数か月もすれば知恵がつき、シャロンとエイミールのお茶とは異なり見た目貧相なお茶とお菓子を用意することにより先輩侍女はようやく解ったのかと満足そうにしていた。
ただ、見た目は質素に見えるティーカップは品の良い物だった。
今では出回っていないのだが、ユナの父親は食器輸入の商会を営んでいた事から珍しく貴重なティーセットも持っていた。
お菓子も見た目は質素に見えるが味は良い物だった。
体に良く、優しい味わいのお菓子だった。
シャロンが食べているお菓子は糖質の多く、見た目は美しいが体に悪い物ばかりだった。
グラマーな体系のシャロンはドレスが合わないぐらい、太り始めた。
常にドレスを新調しなくてはならなくなり、ドレスを買い変えてばかりで出費がかさみだした。
そんなある日。
「ユナ、それは?」
「こちらはアドリア―ナ様のドレスです」
今日も多くの仕立て屋がハント侯爵家に来て、シャロンのドレスを持ってきていた。
対するアドリア―ナは型崩れをしたドレスを着せられていたのだが、今日だけは違っていた。
「新しいわね」
「はい、こちらは公爵家から届いたドレスで…」
「新しいドレスだと?」
見るからに上等の箱に仕舞われていた。
箱を開けるとレース使われていた豪華でヒップを膨らませたバッスルドレスだった。
「エイミール、私はこのドレスがいいわ」
「ああ、シャロンに似合うな。こんな豪華なデザインはアドリア―ナには、似合わない」
「代わりに私の入らなくなったお古を貸してあげるわ。これは私が貰うわね!いいわよね」
「は?」
何を言っているのか。
本人の承諾なしにそんなことが許されるわけがない。
「お待ちください。こちらは兄君のレイモンド様がアドリア―ナお嬢様にと…」
「アドリア―ナは良いって言うわ。私のよ!」
「お止めください!」
「しつこいぞ!」
箱を奪い取るエイミールはユナを突き飛ばし、傍の花瓶が落ちてずぶ濡れになってしまう。
「やだ、床が!」
「何をしている!シャロンに怪我でもしたらどうするんだ!お前の命で詫びても償いきれんぞ!」
雫が少しかかっただけなのに、エイミールは大げさに告げる。
ユナは目の前の二人が悪魔に見えた。
盗人のように他人のドレスを奪い、平然としている二人が恐ろしくなった。
「もう一着あるけど…何?変なペチコートね?要らないわ」
一緒に入っているシンプルなドレスが入っていたが気にも留めず放置した。
ユナはせめて一着だけでも届けようと、誰もいないのを確認してそのドレスを届けたのだ。
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