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番外編~転落した者達
閑話.とあるお針子の事情④
日に日にシャロンの我儘ぶりは酷くなりドレスを借りると言って奪ったまま自分の物して、一度来たら捨てることが続き、アクセサリーや、靴までも同じだった。
アドリア―ナはただ笑っていたが、辛くないはずはない。
「申し訳ありませんお嬢様」
「いいのよ。ユナ、これがあるから」
そう言って見せてくれたのは純白で銀糸があしらわれる美しいドレスだった。
「なんて美しい…」
「これは母の形見なの。私にとっては新しいドレスよりもこの一着の方が価値があるの…このドレスはお母様の一部だから」
「素敵です。きっとお似合いになりますわ」
嬉しそうにドレスを抱きしめながら鏡で合わせるアドリア―ナの笑顔を見て嬉しくなった。
けれど…
アドリア―ナがそのドレスを着ることはなかった。
数日後の舞踏会でアドリア―ナはピンクの型崩れにドレスを着ていた。
対するシャロンはアドリア―ナが着るはずのドレスを着ていたのだ。
信じられない。
母親の形見であることは知らないはずはない。
何故ならこのドレスにはアイリスの花の刺繍がされていたからだ。
聖女でもあり元皇女でもあるアドリア―ナが公の場で着ていたドレスを奪うなんて許されない。
しかもリメイクしてレースやリボンをつけて、刺繍の部分にはコサージュを着けている。
元のシンプルながら美しいドレスのデザインが台無しだった。
酷すぎると思った。
シャロンはドレスの価値も知らないような令嬢だ。
ただアドリア―ナが自分より美しいドレスを着るのが気に入らないのだろう。
――なんとかして取り返さなくては!
搾取され続け、尊厳も奪われ、傷つきすぎたアドリア―ナの大事なドレスをユナは何とかして元の姿に戻したいと思った。
舞踏会が終わって数日後。
シャロンは一度着たドレスには興味もなく捨てた。
衣裳タンスはいっぱいなので処分するように言われ、ユナは早々にそのドレスを修復した。
幸いにもレースを縫い合わせている程度で、所々修復は必要だが、別のドレスにすればんんとかなりそうだった。
しかし、こっそり届けようとしたドレスをエイミールに見られてしまった。
「誰が仕立て直せと言った!」
「しかし、こちらは公爵令嬢の母君の形見と伺いました。亡くなられた母君の思い出の品をできるだけ…」
「貴様は主人の命令に逆らうのか!今すぐ処分しろ!」
「…かしこまりました」
もう耐えられなかった。
こんな化け物邸に住まうぐらいならば賃金が少なくとも別の仕事を探そう。
そうでなくては人ではなくなる気がした。
ユナが辞めると言わずに、エイミールを度々怒らせた事で解雇となったので安堵した。
「そうだわ。シャロン様の部屋から他のドレスも回収してお返ししなくては」
ユナは衣装の管理も任されていたので一部のドレスや宝石はこっそり保管していた。
宝石の価値も解らない模倣とすり替えても問題ないだろうと思ったのだ。
案の定気づかれることはなかった。
ユナは公爵家に幾つかのドレスに装飾品を返しに向かった。
「この度は誠に申し訳ありません」
門税払いをされるか罵倒を浴びせられ、何をされるか解らないが覚悟のうえで公爵家に向かったのだ。
「顔をお上げください。私はお嬢様の傍付きの侍女、リーナ・グノーと申します。以前、お嬢様が着ていらしたドレス…一部だけお嬢様の手元に残ってました。もしや」
「はい」
公爵家から毎回数着のドレスが送られてくる。
その中でも白いドレスはシンプルながら上質な物だった。
シャロンが最初に捨てたペチコートと間違えたのは光に照らすと透明になる素材だった。
よく見ればペチコートではない事は解るのだが、ぱっと見だけで判断していたシャロンは気づかなかった。
そこでユナは作戦を考え、一番良いドレスだけ公爵家に返却していたのだった。
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