ランプの令嬢は妹の婚約者に溺愛され過ぎている

ユウ

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第一部.婚約者は異国の王子様

2.夢の世界





フローレンスは幼い頃から時折夢を見た。
とても不思議な夢で、見知らぬ国であったが大好きなシプロキサンの文明が盛んな場所だった。


ただ、その夢に出て来るのはプロキサン文明と似ているようで若干異なり、知らない言葉が飛び通っていた。


フローレンスの国、いや異国でも聞いたことがない言葉に、国の名前だった。




「わぁ!素敵な茶器」

「これはスリランカのモノだよお客さん」

「なんて素敵なの」


並べられている茶器は色鮮やかで美しく。
茶器だけでなく服も金糸の刺繍が入っており素晴らしかった。


「お客さんは変わっているね…こんなの好きなのかい?」

「スリランカは本当に素敵…もしかしたらアラビアナイトがいたかしら?」

「いたかもしれないね…アラブ商人が沢山いたからね」

褐色の肌を持つ店員が穏やかに微笑みながら告げる。
対する客は女性と言うにはまだ若かったが少女ではなく成人した女性だった。


「私、患者さんにスリランカの人がいたの。そこで素敵なお話をたくさん聞いたのよ?」

「お客さんは本当にスリランカが好きなんだね」

「インドも大好き…一度でいいから行って見たいな」

幸せそうに微笑む女性に店員は笑顔を浮かべるも、夢を見ていたフローレンスは困惑していた。


――インド?スリランカ?
聞いたことがない国の名前だったのに、どこか懐かしさを感じていた。




「けれどスリランカは治安が悪いからね」

「それはスリランカに以外でも同じだわ。でも、だからこそスリランカにような国にこそ万人の為に医療が必要なんです。あそこは治療が受けられない人が多いし」


顔を俯かせ茶器に触れながら憂いの表情をする。


これまで多くの患者と向き合いながら、治療をして来た。
命の現場は戦場で、常に緊張の連続だったがやりがいを感じていた。

そんなときにスリランカの患者に出会い真面な治療を受けられない人が沢山いることを知っていた。




「お客さん…貴女は優しい人ですね。貴女のような人が私の祖国にいたら…天使と呼ばれるでしょう」

「白衣の天使だから?」

「いいえ、ランプを持った天使です。灯りを灯し続ける存在だからです」


そっと優しく触れた手は傷だらけだった。

この時女性は何時か発展途上国にも平等にう医療を受けられるようにしたい。


そんな思いを抱いていた。
そしてこの店で出会った青年と恋人同士になった後にさらにその思いは深まって行った。



「今日はこれを飲んで欲しくて」


「なぁに?ミルクティー?」

「チャイだよ」


「うわぁー…すごく美味しい」

ミルクティーよりコクがあり香辛料の香がキツイがとても美味しかった。


「このお茶好き」

「君ならそういうと思った。俺の好きなお茶を君にも好きになって欲しかったんだ。これから先も」

「え?」

チャイを飲みながら首をかしげ恋人を見つめる。


「俺と結婚してくれないか?」

「え‥は?」

「何時か俺と一緒にスリランカに来て欲しい。そして一緒に同じ景色を見たい。異文化であるけど君と分かち合いたいんだ」


ストレートな言葉だった。
飾り気もないがとても満たされる気分だった。


「私何時かアラビアナイトの国にも行ってみたいの」

「ああ、行こう。約束だ」


風がそよぎながら漆黒の髪が揺れエメラルドグリーンの瞳に魅入られる。

異国を象徴する褐色の肌をした青年に心惹かれ。
この先ずっと一緒にいるのだと思っていた。

結婚して二人で一緒に。


けれど二人はこの世で結ばれることはなかった。


女性はその日、通り魔によって重症負ってしまう。


「貴方…」

「しっかりしてくれ!俺を一人にしないでくれ!」


結婚をして幸せだった二人は皮肉にも二人が結婚してすぐのこと。

「アンタが悪いのよ…アンタだけ幸せになるなんて許さない!」

側で取り押さえられている少女により刺殺されてしまったのだ。


愛し合う二人はこうして引き裂かれることになるが‥‥


「必ず見つけるから…君を見つけるから待っててくれ」

青年は眠りにつく愛しい妻に別れのキスをし誓った。


死が二人を別つことがあっても必ず見つけてみせる。


絶対に一億万の星の下で見つけると誓いを立て涙を流すのだった。







「これは…」



そして目を覚ますと瞳から涙が流れていた。



「今のは夢」


幼いの頃から朧げな夢が日に日にはっきりしていく。



「どうして…」

枕元に置かれているのはあの一夜の夢の中で出会った少年からもらったハンカチだった。


「どうしてこんなに胸が苦しいの」


ハンカチを握りしけながら涙を流した。
現実の世界は理不尽で哀しくて涙すら枯れたのにまだ涙を流すことができたのだと知るのだった。


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