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第一部.婚約者は異国の王子様
14.伯母
東北領地のアスガルト。
そこは北の最果ての要塞となる城が建てられていた。
そこを守るのは一人の夫人、ナタリア・アスガルト。
美しい金髪に青い瞳をした女性は未だに若々しく、美しい外見をしており領民からの信頼も厚かった。
しかし…
「なんですってぇぇ!」
「はっ…母上、落ち着いてください!」
長男である、アイオロス・アスガルトは母親を必死に宥めていた。
「ナタリーどうしたんだい。美しい君には似合わないよ」
怒り狂う妻をなだめながら今日も愛の言葉を告げる父、レオリオはお茶を出しだす。
「よくもまぁ‥恥知らずな真似を!」
「母上、叔父上からなんと?」
「フローレンスを廃嫡すると。後継ぎから外しあの馬鹿娘を後継ぎにして婚約者を入れ替えろ!」
バンっと手紙を机に叩きつけるナタリアは怒りを抑えき折れずにいた。
「あの愚弟が…ここまで馬鹿だったとは」
「何を考えているんだ、カーネル殿は」
「正気の沙汰ですか!」
手紙を読んだアイオリアも震えが止まらなかった。
中央では不穏な噂が流れているのは知っていたが、ここまでとは思わなかった。
「前から頭の足りない男と思いましたが…何処まで馬鹿なんだ」
「ええ、リシュベール侯爵家は聡明なフローレンスを買っていましたわ。本来ならばエレンフレッド様の妻に欲しかったと言ってましたし」
「ですがフローレンスは後継ぎです」
「故にシュナイダーを入り婿にしたのです。優秀なフローレンスならばあの馬鹿をフォローできますし、両家ともうまくやるにはフローレンスの力が必要ですから」
金銭的援助を伯爵家にしてもらっているだけではなく、侯爵家を立て直すためにフローレンスがどれだけ尽くしてくれているか知っていた。
「リシュベール侯爵様はフローレンスを大事にしていましたわ。利益云々ではなく将来義娘になることを喜んでくださって」
「リシュベール夫人も同様です」
政略結婚でありながらも、婚約してから互いの歩み寄りで絆は結べるモノだった。
現にフローレンスはリシュベール家に金銭的な支援よりも家を建て直す方法を考え、対等であることを望んだ。
本来ならばフローレンスは女侯爵となり立場上になるのだが、決して傲慢な態度を取ることなく一歩下がりながら接していた。
その謙虚な態度をリシュベール家も感動していた。
義娘として申し分なく、長男のエレンフレッドもフローレンスを可愛がっていたのだから。
「これまで好き放題しても黙っていたのはフローレンスの為です。私が庇えば愚弟はあの子を苛め傷つけていました…それとなくシュナイダー殿に言ってもさらに状況は悪化」
「ええ、私達が間に入ればさらにフローレンスが悪く言われるだけでした」
病弱な妹を妬んで伯母を味方につける酷い女だと言われる始末だった。
幼少このころはまだましだったとは言え、病弱で守ってあげたくなるようなジェネットを優先してばかりだった。
「こんなことなら無理矢理でもあの子を引き取るべきだったわ」
「今からでもどうにかなりませんか?」
「無理だわ、既に手紙を出しているから撤回できないわ」
相手は公爵家である以上、これ以上の介入は不可能だった。
「だが、婚約者の入れ替え何て公爵家を侮辱する行為じゃないか!万一許されたとしても身代わりになったフローレンスがどんな扱いを受けるか」
「普通に考えれば冷遇され、蔑まれるわね」
「ですが母上、このまま伯爵家にいるならば遠い領地で暮らす方が幸せではありませんか」
辛い状況は変わらないが、娘を売り飛ばすような両親と妹と婚約者のいる場所よりもマシだと思った。
「公爵夫人は慈深いご夫人です。少々変わったお方ですか…悪い方には見えません」
「まぁ、色々ぶっ飛んでいるけど」
面識があるナタリアは色々と噂を流されるクラエス夫人を思い出す。
中央では悪く言われるも、噂に左右された者が勝手に言っているだけに過ぎなかった。
「問題はこのような仕打ちを受けたアリシエ様ね」
「侯爵閣下ですか…」
「ええ、勝手なことをした伯爵家を許すかどうか」
深いため息をつくナタリアはどうしたものかと困り果てていた。
普通に考えても不敬罪になるので不安は拭えなかった。
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