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第一章.婚約破棄騒動
8.公爵令嬢との出会い
しおりを挟むそもそも、私が彼女達と知り合えたのは姉繋がりだった。
当初私は姉の侍女として付き添っていた。
貴族社会では次女や三女は行儀見習いをする。
けれど、私の様に行儀見習いではなく姉の侍女として王宮に行くのは珍しい。
両親曰く、姉を身ならわせ、淑女としての気品を身に着けさせるためらしい。
親切心で姉が言い出したようだが、その所為で誤解を生んでしまった。
伯爵家の次女は召使のような扱いを受けているとか。
姉の引き立て役に利用されているとか。
様々な噂が流れていた。
公のパーティーでも私は地味な型崩れしたドレスで姉はオーダーメイドの立派なドレスだった。
今は気にしていないけど、彼女からすれば哀れな令嬢を見て楽しんでいる。
本当に歪んでいると思った。
思ったのだけど。
「ちょいと、そこの貴女!」
「はっ…はい?」
その日は王宮の廊下で歩いていると声をかけられた。
「何ですのその格好」
「はい?」
「いくら侍女とは言え、貴女は伯爵家の次女ではありませんの?そんな貧相な服装でうろつくなんて」
いや、そんなことを言われても侍女として姉に付き添っているのだから仕方ないじゃないか?
一応は持っているドレスの中でマシな物を持って来た。
靴はヒールではなく出来るだけ歩きやすさを重視した。
かなり地味であるが仕方ないと思っていたのに、その方は私を睨む。
「貴族令嬢としてあるまじきお姿!私の目の前でそんな装いを‥しかもこんあ地味な方が将来義妹だなんてありえませんわ!」
「は?義妹?」
この時の私はかなり間抜けな表情をしていたに違ない。
「ぼさっとしていないでいらっしゃい!」
「ええ!」
「お黙りなさい!私に意見は許さなくてよ」
こんな形で私は当時、サマン様に強制連行されてしまった。
そしてその後、着せ替え人形のように着飾られてしまった。
「ひぃぃ!無理です。こんなドレス着れません」
「だったらどんなのがいいんですの?期待はしませんが一応聞いて差し上げますわ。ただし絹以外のドレスは許しませんわ」
「いえ…こちらで」
絹のドレスなんて無理だ。
我が家はそれなりに裕福だけど絹のドレスなんて王族ぐらいしか着れない。
このドレス一着の金額を考えると恐ろしい。
「こちらを…」
「信じられませんわ!グレーですって?なんてセンスがない…いいえ、センス以前の問題ですわ!」
「申し訳ありません」
ここまで言わなくてもいいのに。
「軽々しく謝らないでくださる?貴女にプライドはないのですか」
どうしてここまで怒られるのか。
「いい事、淑女にとってドレスは戦闘服ですわ」
「はっ…はぁ」
「より美しい装いをして戦場を生き抜く。戦う覚悟を持たぬ者は、弱肉強食の世界では生きられませんわ」
「そう言われましても、私は草食系で…」
「お黙りなさい!」
ビシッ!と指揮棒のようなものでテーブルを叩かれる。
「私が淑女のなんたるかを教えて差し上げますわ」
これが公爵令嬢のサマンサ様との出会いだった。
しかし、その後直ぐに縁は続いた。
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