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第四章未来への扉
19.幸せの中で
しおりを挟む結婚式を一週間後に控えた私は王宮にて過ごしていた。
お妃教育は順調に進み、忙しく過ごしながらも、ジルベルト様は出来るだけ時間を作ってくださった。
「いよいよ一週間後でございますね、お嬢様」
「ええ」
「クローネは嬉しゅうございます」
泣くのは早すぎるけど、クローネには苦労ばかりかけていた。
私が幼少期の頃から不遇な立場を嘆き悲しみながらも傍で支えてくれていたのだから。
「今まで本当にありがとう」
「何を申しますの!私はこれからもお嬢様のお傍におりますわ」
「嬉しいけど…でも、私の為に自分の幸せを犠牲にしないでね」
結婚が幸せに繋がるとは思ってないけど、クローネの幸せを邪魔したくない。
「私の幸せはお嬢様のお傍にいる事です」
「クローネ…」
人の幸せはそれぞれだから私から何かを言う気はない。
でも、クローネに思う人がいるならば、その人と幸せになって欲しいと思う。
「さぁ、明日も早いのでお休みください」
「ええ、ありがとう」
部屋を出て行くクローネを見送りながら私は部屋で一息つく。
「いよいよなのね」
部屋に飾られているのは結婚式当日に着る予定のウェディングドレス。
「なんだか不思議。今でも夢を見ているようだわ」
ドレスの裾に触れながら私がこれを着るなんて夢みたいだった。
「ベアトリスも女伯爵となることができたから、結婚式で王族の近くの席に座ることできる…良かった」
紆余曲折はあれど、愛する人と幸せになることができるなんて夢みたいだった。
「これまの苦労は幸せになるためだと思えば、良かったのよね」
両親からの叱責に元婚約者からの仕打ちも試練だと思えば、良かったと思えた。
「私が巫女だなんてまだ実感はないわ…でも」
これから王太子妃として、巫女としての役目もある。
重い役目でもあるが、一つ、一つ問題を解決していけばいいと思った。
その時だった。
「失礼します。公爵家の使いの者でございます」
扉の向こうから声が聞こえた。
「こんな時間に?変ね」
普段は風の魔法で手紙を送ることが多く、侍従を送ってくることはないのにどうしたのだろうか?
「申し訳ありません、急ぎの用事でございます」
急かすような声だった。
「はっ…はい」
急いで扉を開けると侍従は、ノーチェスト家の家紋が刺繍されたローブを身に着けていた。
「あの…」
「公爵令嬢が急ぎの用事があるととのことです」
「お姉様が?」
急いで部屋を出る準備をして侍従の後をついていくことにした。
けれど、何故か騒ぎを感じた。
さっきまで風も穏やかだったのに、不穏な風が私に何かを伝えるかのようだった。
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