令嬢は大公に溺愛され過ぎている。

ユウ

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閑話女帝

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宮廷の敷地内にある小さな離宮、プルシア宮殿。
ここに住まうのは退位した王や妻が住まう別邸とさている。

王太后、セラフィーヌ。
現王の生母でありこの国の女帝とされる。
前王妃不在の間はその代わりを務め未だにその権力は衰えることもなく女性でありながらも王としての器を持ち合わせていた。

「待っていましたよ。レオンハルト」

「ご機嫌麗しゅう……」

「挨拶は結構。本題に入りなさい」

「はっ…はい」

パチンと扇を閉じてすぐに座るように促す。

「王太后様」

宮廷では鬼軍曹として恐れられるアンジェリーナも冷や汗を流している。

「何か文句でも?」

「いえ、殿下も多忙の身で」

「要領が悪いのじゃ。まったく兄は愚の骨頂で弟も弟でヘタレよの。こんなダメな男に育てた覚えはない」

さらりと暴言を吐き続ける。
二人は顔が引きつるも何も言えないのはこの国で最も地位が高い女性というだけではない。

「惚れた女子を口説くのにそなたはどれだけ時間がかかっておるのだ?まったく誰に似たのか」

「そうは申されましても」

「やかましいわ!ただでさえ阿呆が余計なことをしてくれた所為で後始末で嘆いておるというのに」

後始末とは先日の婚約話のことだ。
婚約破棄をするにはちゃんとした手続きが必要なのだが勝手なことばかりするグランツ侯爵家の所為で後始末をせざる得なかったことを怒る。

「馬鹿息子にはお灸をすえてくれるわ」

この時二人は思った。
親が子供に据えるお灸なんて生易しいモノではない。

セラフィーヌはとにかく容赦がなかった。

「だが、これで丸く収まると言うモノじゃ。アレーシャがグランツ家になんぞに嫁に行けば過労死するのが関の山。優秀な人材を失うのは惜しい」

「ありがとうございます」

「剣を納めるには鞘が必要じゃ。妻は鞘でなくてはならぬ」

夫と妻は常に対局の存在であり。
攻めと守りの対でなくてはならないと常に教えられて来たレオンハルト。

今なら解る気がした。

「アレーシャは鞘となるか?」

「最高の鞘でございます」

「うむ、よかろう」

不敵に笑みを浮かべ紅茶を飲む。

「アレーシャは王女の世話係役でありながらも肩身の狭い思いをしておる」

「はい、義母と義妹に邸で嫌がらせを受けており。お給金も奪われておると聞いております」

バキッ!!

優雅にお茶を飲みながらも扇が木っ端みじんで折れる音に二人はビクつく。

両手ではなく片手で粉々にしたのだ。


「ほぉ?身の程を弁えぬ馬鹿者が…それに比べてアレーシャは聡いこと」

「ええ」

「聞けばお給金の半分は荒れ果てた領地を買い占めていたようじゃな」

書類に目を通す。
普通は王女の教育係となれば普通の侍女よりも立場は約束され、お給金も倍以上になる。

言い方は悪いが宮廷内で重要な役職に就くこともでき、王女の補佐として利用することはできるのだが、アレーシャは正式にサーシャの専属侍女になった時に願い出たのだ。

「教育家係はあくまでお世話係と…な?」

「アレーシャは聡い娘です。世話係役としての立場を理解しております」

乳兄弟や乳母、世話係役に必要以上の権力を与えては危険すぎることを知っていた。

現に側室は専属侍女の娘などを王太子の侍女に迎えて欲しいと進言している。

魂胆は丸見えだ。
その立場を利用する気でいるなんてお見通しだった。

「何故、アレーシャが選ばれたか解っておらぬ」

「ええ、プライム家は伯爵家でありますが穏健派で中立ですから」

誰が王になろうとも公平な判断で見ることもできる。
財もあるので爵位を欲することもないことも選ばれた内の一つだった。

「世話係役は常に王子、王女のことを考えなくては」

「そうじゃ、常にでしゃばらず立場を弁える者。それを馬鹿どもは勝手にアレーシャの能力が足りないから出世できんと思ったが、逆じゃ」

「逆?」

全てを知っているアンジェリーナが答えた。

「数年前に彼女に出世の話が出ていました。ですが王女様の教育を最優先し断ったのです」

「そのお話は…」

「エンディミオンの妻、及び補佐じゃ」

あっけらかんと答えるセラフィーヌに絶句する。

「アレーシャは美しい。エンディミオンとも上手く行くと思ってのぉ?無理ならば補佐にしてもいいと思ったのじゃ」

冗談ではない。
睨みつけようとするも王太后からすれば痛くもかゆくもなかくニヤニヤ笑われ、苦痛のひと時を過ごしていた。
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