20 / 63
兄と弟
しおりを挟む
長い廊下を渡ると大きな部屋に到着する。
「少し休んでくれ」
「よし、俺がお茶を…」
「え!」
やる気に満ち溢れたエンディミオン。
だがアレーシャは知っていた。
天才肌のエンディミオンだが万能ではない。
「まぁ、叔父様が」
「楽しみです」
期待を込める王女と王子は幼さゆえに知らなかった。
エンディミオンがお茶を淹れるとどうなるか。
「まずい!!」
「ぐっ!!」
二人は早々に苦しみ出した。
「飲むな」
「ですが…」
「体調が悪いのにあんなまずいお茶を飲んだから悪化する」
(さりげなく酷いわ)
いくら何でも言い過ぎでは?と思うも王弟殿下に対してこの態度は一歩間違えれば不敬罪になるのはずだが普通だった。
「こんなお茶を彼女に飲ませるな」
「酷いですね」
「事実だ。お茶もまともに淹れられないのか…いや、俺も得意ではないが」
二人のやり取りはとにかくフランクだった。
「私が淹れ直します」
なんとか復活したルーファスが代わりにお茶を用意する。
「そんな!王太子殿下に」
「これ以上こんなまずい茶は飲みたくないからな」
慣れた手つきお茶を淹れ直す。
「なんだかダメな大人だと言われている気分だな」
「実際そうだろうが」
「哀しい」
泣きマネをするエンディミオンをもし貴族の令嬢が見たらがっかりするだろうがこれが素だった。
「ですが、エディー様。レオンハルト様とはどういう御関係ですか?」
「ん?聞いてないのか?」
「はい?」
聞いてないとはどういうことだろう?
「は?兄上!何も言ってなかったんですか」
(兄上…?)
気のせいか熱で幻聴が聞こえたのだろうか?
「アレーシャ。レオンハルト叔父上は父の弟君だ」
「へ…はぁ?」
「私も直にお会いするのは数年ぶりだわ。貴族でも限られた方しか顔を知らないでしょうから」
カップを持ったまま固まってしまった。
蘇る数々の無礼に眩暈がした。
(私は‥‥なんてことを!!)
穴があったら今すぐはいりたい。
「すまないアレーシャ。騙す気は無かったんだ」
「ご無礼を…」
「頼むから謝らないでくれ。俺が意図的に隠した。言うつもりもなかったんだ」
言うつもりはなかった。
それはどういう意味か解らなかった。
「少し休んでくれ」
「よし、俺がお茶を…」
「え!」
やる気に満ち溢れたエンディミオン。
だがアレーシャは知っていた。
天才肌のエンディミオンだが万能ではない。
「まぁ、叔父様が」
「楽しみです」
期待を込める王女と王子は幼さゆえに知らなかった。
エンディミオンがお茶を淹れるとどうなるか。
「まずい!!」
「ぐっ!!」
二人は早々に苦しみ出した。
「飲むな」
「ですが…」
「体調が悪いのにあんなまずいお茶を飲んだから悪化する」
(さりげなく酷いわ)
いくら何でも言い過ぎでは?と思うも王弟殿下に対してこの態度は一歩間違えれば不敬罪になるのはずだが普通だった。
「こんなお茶を彼女に飲ませるな」
「酷いですね」
「事実だ。お茶もまともに淹れられないのか…いや、俺も得意ではないが」
二人のやり取りはとにかくフランクだった。
「私が淹れ直します」
なんとか復活したルーファスが代わりにお茶を用意する。
「そんな!王太子殿下に」
「これ以上こんなまずい茶は飲みたくないからな」
慣れた手つきお茶を淹れ直す。
「なんだかダメな大人だと言われている気分だな」
「実際そうだろうが」
「哀しい」
泣きマネをするエンディミオンをもし貴族の令嬢が見たらがっかりするだろうがこれが素だった。
「ですが、エディー様。レオンハルト様とはどういう御関係ですか?」
「ん?聞いてないのか?」
「はい?」
聞いてないとはどういうことだろう?
「は?兄上!何も言ってなかったんですか」
(兄上…?)
気のせいか熱で幻聴が聞こえたのだろうか?
「アレーシャ。レオンハルト叔父上は父の弟君だ」
「へ…はぁ?」
「私も直にお会いするのは数年ぶりだわ。貴族でも限られた方しか顔を知らないでしょうから」
カップを持ったまま固まってしまった。
蘇る数々の無礼に眩暈がした。
(私は‥‥なんてことを!!)
穴があったら今すぐはいりたい。
「すまないアレーシャ。騙す気は無かったんだ」
「ご無礼を…」
「頼むから謝らないでくれ。俺が意図的に隠した。言うつもりもなかったんだ」
言うつもりはなかった。
それはどういう意味か解らなかった。
543
あなたにおすすめの小説
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
婚約破棄を申し入れたのは、父です ― 王子様、あなたの企みはお見通しです!
みかぼう。
恋愛
公爵令嬢クラリッサ・エインズワースは、王太子ルーファスの婚約者。
幼い日に「共に国を守ろう」と誓い合ったはずの彼は、
いま、別の令嬢マリアンヌに微笑んでいた。
そして――年末の舞踏会の夜。
「――この婚約、我らエインズワース家の名において、破棄させていただきます!」
エインズワース公爵が力強く宣言した瞬間、
王国の均衡は揺らぎ始める。
誇りを捨てず、誠実を貫く娘。
政の闇に挑む父。
陰謀を暴かんと手を伸ばす宰相の子。
そして――再び立ち上がる若き王女。
――沈黙は逃げではなく、力の証。
公爵令嬢の誇りが、王国の未来を変える。
――荘厳で静謐な政略ロマンス。
(本作品は小説家になろうにも掲載中です)
婚約破棄されたので、前世の知識で無双しますね?
ほーみ
恋愛
「……よって、君との婚約は破棄させてもらう!」
華やかな舞踏会の最中、婚約者である王太子アルベルト様が高らかに宣言した。
目の前には、涙ぐみながら私を見つめる金髪碧眼の美しい令嬢。確か侯爵家の三女、リリア・フォン・クラウゼルだったかしら。
──あら、デジャヴ?
「……なるほど」
断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる
葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。
アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。
アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。
市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。
婚約破棄?ああ、どうぞお構いなく。
パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢アミュレットは、その完璧な美貌とは裏腹に、何事にも感情を揺らさず「はぁ、左様ですか」で済ませてしまう『塩対応』の令嬢。
ある夜会で、婚約者であるエリアス王子から一方的に婚約破棄を突きつけられるも、彼女は全く動じず、むしろ「面倒な義務からの解放」と清々していた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる