26 / 63
閑話2穴だらけの侍女
しおりを挟む
体調もすぐれないこともあってしばらく療養することになった。
侍女の仕事は一先ず休みとなったのだが…
宮廷内では問題が生じた。
他の侍女が代わりを務めていたのだが…
「何ですの?このお茶は…まずい」
「えっ?」
お茶会にて用意されたお茶を飲んだ夫人は口をそろえて言い放つ。
「水臭いし、渋すぎだわ。こんなお茶を出すなんて馬鹿にしているの?」
「飲めたものではありませんわ!」
相手はサフェル公爵夫人。
保守派の貴族であるが実力主義の穏健派。
宮廷では影響力を持ち、礼節を重んじる夫人だった。
お茶会の席では誰もが頭を下げる程の人物で侍女も気を配っていたのだが、今日出されたお茶とお菓子を咎める。
「それに今日のお菓子…酷いですわね」
隣で言葉を放つのは、パッフェルド侯爵夫人。
サフェル公爵夫人同様に社交界では有名な人物だった。
夫は宰相を務めている。
「いつもならば口当たりの良い優しい味のお菓子から始まり口が慣れてきたらクッキーとケーキが振る舞われると言うのに」
「私達を馬鹿にしているのかしら?」
お茶を心から愛する彼女達にとって一杯のお茶ですら貴重だった。
「この茶葉に使ったお水を」
「え?」
「聞こえなかったのですか?この茶葉に使った水を持ってきなさいと言ったのです」
「はっ…はい!」
サフェル公爵夫人に言われた通り侍女は水を持って来た。
「こちらが紅茶に使った水で…」
「なんてことですの!」
ガタン!
テーブルから立ち上がるサフェル夫人は怒りを露わにする。
「この水は純度の低い水ではありませんか!しかもお茶に不向きな水」
「こんな水をお茶会にお出しするなんて…無礼者!」
扇を投げつけられた侍女は驚く。
紅茶に出した水は飲み水として使うモノで問題はないはずだ。
「あの…問題でも?」
「問題ですって?」
普段お茶を用意するのは全てアレーシャに任せ他の侍女はカップに注ぐだけだ。
今日はそのアレーシャが居らず自分達で用意したので普段その水を使っているかなんて解るはずもない。
「侍女長を呼びなさい」
「え?」
「聞こえませんでしたか?侍女長を呼べと言ったのです!」
怒りに満ちた表情で言われ侍女は直ぐに侍女長を呼び出す。
「お呼びでございますか」
「侍女長、私達を馬鹿にしているんですの?紅茶にこんな水を使うだなんて」
「少々失礼いたします」
水をコップに注ぎ飲むと口当たりが重くドロッとした感覚が残る。
「これは…」
「普段私達は温泉水を飲んでいます。お茶も純度の高いものを好んで飲んでいました。お客様にも最高のお茶を飲んでいただきたく宮廷に茶葉を提供していましたわ」
自ら資源を確保するのは難しい中、一部の貴族は国を豊かにするべく私財を投げうって農作物を開発している。
その代表者がサフェル公爵夫人とパッフェルド夫人だった。
「私達の開発した茶葉をより美味しく飲めるようにと温泉水を彼女は提案してくれました。にもかかわらずどういうつもりかしら?」
「私達にとってお茶会は大切な場ですのよ?それを」
もしここにアレーシャがいればこんな失態はありえない。
「侍女長、これはどういうことだ!!」
「侍女長!庭園の花が枯れているではないか!あれは妻が王女様の為にと用意した我が領地の最高の薔薇だぞ!!」
「侍女長…頼んでいた書類に不備がある!どうなっている!」
次から次へと問題が発生する。
立て続けに起きるアクシデントに侍女長は対応しきれなくなっていた。
普段隠れてアレーシャがどれだけ仕事をこなしていたか理解する侍女長だった。
侍女の仕事は一先ず休みとなったのだが…
宮廷内では問題が生じた。
他の侍女が代わりを務めていたのだが…
「何ですの?このお茶は…まずい」
「えっ?」
お茶会にて用意されたお茶を飲んだ夫人は口をそろえて言い放つ。
「水臭いし、渋すぎだわ。こんなお茶を出すなんて馬鹿にしているの?」
「飲めたものではありませんわ!」
相手はサフェル公爵夫人。
保守派の貴族であるが実力主義の穏健派。
宮廷では影響力を持ち、礼節を重んじる夫人だった。
お茶会の席では誰もが頭を下げる程の人物で侍女も気を配っていたのだが、今日出されたお茶とお菓子を咎める。
「それに今日のお菓子…酷いですわね」
隣で言葉を放つのは、パッフェルド侯爵夫人。
サフェル公爵夫人同様に社交界では有名な人物だった。
夫は宰相を務めている。
「いつもならば口当たりの良い優しい味のお菓子から始まり口が慣れてきたらクッキーとケーキが振る舞われると言うのに」
「私達を馬鹿にしているのかしら?」
お茶を心から愛する彼女達にとって一杯のお茶ですら貴重だった。
「この茶葉に使ったお水を」
「え?」
「聞こえなかったのですか?この茶葉に使った水を持ってきなさいと言ったのです」
「はっ…はい!」
サフェル公爵夫人に言われた通り侍女は水を持って来た。
「こちらが紅茶に使った水で…」
「なんてことですの!」
ガタン!
テーブルから立ち上がるサフェル夫人は怒りを露わにする。
「この水は純度の低い水ではありませんか!しかもお茶に不向きな水」
「こんな水をお茶会にお出しするなんて…無礼者!」
扇を投げつけられた侍女は驚く。
紅茶に出した水は飲み水として使うモノで問題はないはずだ。
「あの…問題でも?」
「問題ですって?」
普段お茶を用意するのは全てアレーシャに任せ他の侍女はカップに注ぐだけだ。
今日はそのアレーシャが居らず自分達で用意したので普段その水を使っているかなんて解るはずもない。
「侍女長を呼びなさい」
「え?」
「聞こえませんでしたか?侍女長を呼べと言ったのです!」
怒りに満ちた表情で言われ侍女は直ぐに侍女長を呼び出す。
「お呼びでございますか」
「侍女長、私達を馬鹿にしているんですの?紅茶にこんな水を使うだなんて」
「少々失礼いたします」
水をコップに注ぎ飲むと口当たりが重くドロッとした感覚が残る。
「これは…」
「普段私達は温泉水を飲んでいます。お茶も純度の高いものを好んで飲んでいました。お客様にも最高のお茶を飲んでいただきたく宮廷に茶葉を提供していましたわ」
自ら資源を確保するのは難しい中、一部の貴族は国を豊かにするべく私財を投げうって農作物を開発している。
その代表者がサフェル公爵夫人とパッフェルド夫人だった。
「私達の開発した茶葉をより美味しく飲めるようにと温泉水を彼女は提案してくれました。にもかかわらずどういうつもりかしら?」
「私達にとってお茶会は大切な場ですのよ?それを」
もしここにアレーシャがいればこんな失態はありえない。
「侍女長、これはどういうことだ!!」
「侍女長!庭園の花が枯れているではないか!あれは妻が王女様の為にと用意した我が領地の最高の薔薇だぞ!!」
「侍女長…頼んでいた書類に不備がある!どうなっている!」
次から次へと問題が発生する。
立て続けに起きるアクシデントに侍女長は対応しきれなくなっていた。
普段隠れてアレーシャがどれだけ仕事をこなしていたか理解する侍女長だった。
535
あなたにおすすめの小説
【完結】愛で結ばれたはずの夫に捨てられました
ユユ
恋愛
「出て行け」
愛を囁き合い、祝福されずとも全てを捨て
結ばれたはずだった。
「金輪際姿を表すな」
義父から嫁だと認めてもらえなくても
義母からの仕打ちにもメイド達の嫌がらせにも
耐えてきた。
「もうおまえを愛していない」
結婚4年、やっと待望の第一子を産んだ。
義務でもあった男児を産んだ。
なのに
「不義の子と去るがいい」
「あなたの子よ!」
「私の子はエリザベスだけだ」
夫は私を裏切っていた。
* 作り話です
* 3万文字前後です
* 完結保証付きです
* 暇つぶしにどうぞ
【完結】婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜
平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。
だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。
流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!?
魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。
そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…?
完結済全6話
2025.10〜連載版構想書き溜め中
【完結】もう結構ですわ!
綾雅(りょうが)今月は2冊出版!
恋愛
どこぞの物語のように、夜会で婚約破棄を告げられる。結構ですわ、お受けしますと返答し、私シャルリーヌ・リン・ル・フォールは微笑み返した。
愚かな王子を擁するヴァロワ王家は、あっという間に追い詰められていく。逆に、ル・フォール公国は独立し、豊かさを享受し始めた。シャルリーヌは、豊かな国と愛する人、両方を手に入れられるのか!
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/11/29……完結
2024/09/12……小説家になろう 異世界日間連載 7位 恋愛日間連載 11位
2024/09/12……エブリスタ、恋愛ファンタジー 1位
2024/09/12……カクヨム恋愛日間 4位、週間 65位
2024/09/12……アルファポリス、女性向けHOT 42位
2024/09/11……連載開始
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜
早奈恵
恋愛
【完結】ざまぁ展開あります⚫︎幼なじみで婚約者のデニスが恋人を作り、破談となってしまう。困ったステファニーは急遽婿探しをする事になる。⚫︎新しい相手と婚約発表直前『やっぱりステファニーと結婚する』とデニスが言い出した。⚫︎辺境伯になるにはステファニーと結婚が必要と気が付いたデニスと辺境伯夫人になりたかった恋人ブリトニーを前に、ステファニーは新しい婚約者ブラッドリーと共に対抗する。⚫︎デニスの恋人ブリトニーが不公平だと言い、デニスにもチャンスをくれと縋り出す。⚫︎そしてデニスとブラッドが言い合いになり、決闘することに……。
不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。
桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。
戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。
『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。
※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。
時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。
一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。
番外編の方が本編よりも長いです。
気がついたら10万文字を超えていました。
随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!
「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。
パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、
クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。
「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。
完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、
“何も持たずに”去ったその先にあったものとは。
これは誰かのために生きることをやめ、
「私自身の幸せ」を選びなおした、
ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる