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閑話2穴だらけの侍女
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体調もすぐれないこともあってしばらく療養することになった。
侍女の仕事は一先ず休みとなったのだが…
宮廷内では問題が生じた。
他の侍女が代わりを務めていたのだが…
「何ですの?このお茶は…まずい」
「えっ?」
お茶会にて用意されたお茶を飲んだ夫人は口をそろえて言い放つ。
「水臭いし、渋すぎだわ。こんなお茶を出すなんて馬鹿にしているの?」
「飲めたものではありませんわ!」
相手はサフェル公爵夫人。
保守派の貴族であるが実力主義の穏健派。
宮廷では影響力を持ち、礼節を重んじる夫人だった。
お茶会の席では誰もが頭を下げる程の人物で侍女も気を配っていたのだが、今日出されたお茶とお菓子を咎める。
「それに今日のお菓子…酷いですわね」
隣で言葉を放つのは、パッフェルド侯爵夫人。
サフェル公爵夫人同様に社交界では有名な人物だった。
夫は宰相を務めている。
「いつもならば口当たりの良い優しい味のお菓子から始まり口が慣れてきたらクッキーとケーキが振る舞われると言うのに」
「私達を馬鹿にしているのかしら?」
お茶を心から愛する彼女達にとって一杯のお茶ですら貴重だった。
「この茶葉に使ったお水を」
「え?」
「聞こえなかったのですか?この茶葉に使った水を持ってきなさいと言ったのです」
「はっ…はい!」
サフェル公爵夫人に言われた通り侍女は水を持って来た。
「こちらが紅茶に使った水で…」
「なんてことですの!」
ガタン!
テーブルから立ち上がるサフェル夫人は怒りを露わにする。
「この水は純度の低い水ではありませんか!しかもお茶に不向きな水」
「こんな水をお茶会にお出しするなんて…無礼者!」
扇を投げつけられた侍女は驚く。
紅茶に出した水は飲み水として使うモノで問題はないはずだ。
「あの…問題でも?」
「問題ですって?」
普段お茶を用意するのは全てアレーシャに任せ他の侍女はカップに注ぐだけだ。
今日はそのアレーシャが居らず自分達で用意したので普段その水を使っているかなんて解るはずもない。
「侍女長を呼びなさい」
「え?」
「聞こえませんでしたか?侍女長を呼べと言ったのです!」
怒りに満ちた表情で言われ侍女は直ぐに侍女長を呼び出す。
「お呼びでございますか」
「侍女長、私達を馬鹿にしているんですの?紅茶にこんな水を使うだなんて」
「少々失礼いたします」
水をコップに注ぎ飲むと口当たりが重くドロッとした感覚が残る。
「これは…」
「普段私達は温泉水を飲んでいます。お茶も純度の高いものを好んで飲んでいました。お客様にも最高のお茶を飲んでいただきたく宮廷に茶葉を提供していましたわ」
自ら資源を確保するのは難しい中、一部の貴族は国を豊かにするべく私財を投げうって農作物を開発している。
その代表者がサフェル公爵夫人とパッフェルド夫人だった。
「私達の開発した茶葉をより美味しく飲めるようにと温泉水を彼女は提案してくれました。にもかかわらずどういうつもりかしら?」
「私達にとってお茶会は大切な場ですのよ?それを」
もしここにアレーシャがいればこんな失態はありえない。
「侍女長、これはどういうことだ!!」
「侍女長!庭園の花が枯れているではないか!あれは妻が王女様の為にと用意した我が領地の最高の薔薇だぞ!!」
「侍女長…頼んでいた書類に不備がある!どうなっている!」
次から次へと問題が発生する。
立て続けに起きるアクシデントに侍女長は対応しきれなくなっていた。
普段隠れてアレーシャがどれだけ仕事をこなしていたか理解する侍女長だった。
侍女の仕事は一先ず休みとなったのだが…
宮廷内では問題が生じた。
他の侍女が代わりを務めていたのだが…
「何ですの?このお茶は…まずい」
「えっ?」
お茶会にて用意されたお茶を飲んだ夫人は口をそろえて言い放つ。
「水臭いし、渋すぎだわ。こんなお茶を出すなんて馬鹿にしているの?」
「飲めたものではありませんわ!」
相手はサフェル公爵夫人。
保守派の貴族であるが実力主義の穏健派。
宮廷では影響力を持ち、礼節を重んじる夫人だった。
お茶会の席では誰もが頭を下げる程の人物で侍女も気を配っていたのだが、今日出されたお茶とお菓子を咎める。
「それに今日のお菓子…酷いですわね」
隣で言葉を放つのは、パッフェルド侯爵夫人。
サフェル公爵夫人同様に社交界では有名な人物だった。
夫は宰相を務めている。
「いつもならば口当たりの良い優しい味のお菓子から始まり口が慣れてきたらクッキーとケーキが振る舞われると言うのに」
「私達を馬鹿にしているのかしら?」
お茶を心から愛する彼女達にとって一杯のお茶ですら貴重だった。
「この茶葉に使ったお水を」
「え?」
「聞こえなかったのですか?この茶葉に使った水を持ってきなさいと言ったのです」
「はっ…はい!」
サフェル公爵夫人に言われた通り侍女は水を持って来た。
「こちらが紅茶に使った水で…」
「なんてことですの!」
ガタン!
テーブルから立ち上がるサフェル夫人は怒りを露わにする。
「この水は純度の低い水ではありませんか!しかもお茶に不向きな水」
「こんな水をお茶会にお出しするなんて…無礼者!」
扇を投げつけられた侍女は驚く。
紅茶に出した水は飲み水として使うモノで問題はないはずだ。
「あの…問題でも?」
「問題ですって?」
普段お茶を用意するのは全てアレーシャに任せ他の侍女はカップに注ぐだけだ。
今日はそのアレーシャが居らず自分達で用意したので普段その水を使っているかなんて解るはずもない。
「侍女長を呼びなさい」
「え?」
「聞こえませんでしたか?侍女長を呼べと言ったのです!」
怒りに満ちた表情で言われ侍女は直ぐに侍女長を呼び出す。
「お呼びでございますか」
「侍女長、私達を馬鹿にしているんですの?紅茶にこんな水を使うだなんて」
「少々失礼いたします」
水をコップに注ぎ飲むと口当たりが重くドロッとした感覚が残る。
「これは…」
「普段私達は温泉水を飲んでいます。お茶も純度の高いものを好んで飲んでいました。お客様にも最高のお茶を飲んでいただきたく宮廷に茶葉を提供していましたわ」
自ら資源を確保するのは難しい中、一部の貴族は国を豊かにするべく私財を投げうって農作物を開発している。
その代表者がサフェル公爵夫人とパッフェルド夫人だった。
「私達の開発した茶葉をより美味しく飲めるようにと温泉水を彼女は提案してくれました。にもかかわらずどういうつもりかしら?」
「私達にとってお茶会は大切な場ですのよ?それを」
もしここにアレーシャがいればこんな失態はありえない。
「侍女長、これはどういうことだ!!」
「侍女長!庭園の花が枯れているではないか!あれは妻が王女様の為にと用意した我が領地の最高の薔薇だぞ!!」
「侍女長…頼んでいた書類に不備がある!どうなっている!」
次から次へと問題が発生する。
立て続けに起きるアクシデントに侍女長は対応しきれなくなっていた。
普段隠れてアレーシャがどれだけ仕事をこなしていたか理解する侍女長だった。
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