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婚約破棄宣言
しおりを挟む王はカテリーナの言い分を聞いて呆れる。
「そなたはエリックと婚約を望んでいたはずであろう」
「誤解です。グランツ侯爵が無理矢理…私が家の為に仕方なく!」
まるで悲劇のヒロインぶるような言い方だった。
そのあんまりな発言に勢い余って言葉を放ったのはグランツ侯爵夫人だった。
「なっ!エリックと婚約したいと言ったのではなくて?プライム夫人からも是非にと!」
グランツ侯爵夫人はカテリーナに怒りを覚える。
カテリーナに婚約者を取り換えて欲しいとは言ったが、カテリーナがエリックに一目ぼれしたのが事の始まりだった。
「私だってこんな礼儀知らずだと知っていれば頼まなかったわ」
「おいお前!」
「婚約は破棄させていただきます。こんな礼儀知らずを嫁にしたら社交界の笑いの場です」
グランツ侯爵は妻を咎めるもグランツ侯爵夫人は婚約破棄を告げた。
「こんな場所で何を…」
「陛下。ご無礼をお許しくださいませ」
こんな場で言うべきことではないが、もう我慢ならなかった。
「私は息子を辱めるような嫁は要りませんわ」
「シェリーナ!!」
グランツ侯爵が妻を再度怒鳴るが、夫人、シェリーナの意志は固かった。
「アレーシャ嬢。度重なる無礼をお詫びいたします。許されることではございませんが私は人を見る目がなかったようですわ…夫に関しても」
「陛下の御前で!!」
「離縁でもなんでもしてくださりませ。ですがあの娘を嫁にするならばそれ相応の御覚悟をなさいませ」
これまで夫に逆らうことをしなかったシェリーナだが息子を心から愛しているが故に我慢ならなかった。
「例え貴女が私を愛してなくても私は愛しておりました。そして愛人の子でも私は愛情を持って育ててきましたわ」
「母上…」
シェリーナの言葉にエリックは感動していた。
言葉に出されることは今まで一度もなかったからだ。
「大事な息子を不幸にするなど許せませんわ」
血が半分しか繋がっていなくても家族としての絆はある。
もしここで夫婦の仲がこじれるならば子供達だけでも実家に連れて行くつもりだった。
「カテリーナ嬢。貴女の望み通りこの場で婚約破棄をして差し上げます。持参金もすべてお返ししますわ」
「なっ!本気で言っているんですか!」
カテリーナは理解できなかった。
自分を必要としないシェリーナの言葉が良く解らない。
「ええ、グランツ家は借金を背負っておりますが。それでも貴女を嫁に迎えるよりずっといいですわ」
借金を抱えていたグランツ侯爵家はプライム伯爵家と婚姻するにあたって持参金受っていた。
婚約期間であるがそれ相応の金額を受け取っていたがそのすべてを返すと言い放つ。
「お礼に貴女がアレーシャ嬢の給料を根こそぎ奪って苛めていたことも証言してあげますわ」
「何を言うんです!グランツ侯爵夫人!」
ルクレチアはすぐに止めようとしたが遅かった。
「知ってますのよ?貴女がプライム伯爵が留守なのをいいことにお金を浪費し、アレーシャ嬢を屋根裏部屋に追いやったことも…宮廷では侍女を苛めていたことも」
不敵な笑みを浮かべ仕返しと言わんばかりにこれまで所業を言い放つ。
「嘘です!そんな」
カテリーナは狼狽える。
侍女を苛めていたのは事実だがバレないようにしていた。
「でたらめです!!そんな」
「ではその本人に聞いてみましょうか?」
ルクレチアが言いがかりだと言う中、一人の夫人が発言する。
「貴女は!」
「私の娘がお世話になりましたわね?プライム伯爵夫人?」
笑みを浮かべる夫人は口元は笑っていても目が笑っていない。
「私の顔を覚えていますでしょ?」
「リューバリー夫人!!」
ルクレチアは真っ青な表情をし震えていた。
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