令嬢は大公に溺愛され過ぎている。

ユウ

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銀の食器と花

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その夜、お茶を飲んでいたら急にカップの取っ手が取れてしまう。


「あら?」

「お嬢様!」

皹が入っているわけでもないのにいきなり取れてしまった。


「お怪我はございませんか!」

ユリアは急いで手を見る。
万一にでも指が切れていたらと思い確認する。

「大丈夫よ」

「ですが、どうしていきなり」

このカップはまだ真新しい。


「おかしいわね」

「あまり触れないでくださいね?怪我をしたら大変ですから」


「私が片付けましょうユリア」

傍にいるクリステルがカップを処分する。


言われる前に動くクリステルを見て笑みを浮かべるユリア。


「思いのほか使えますわね」


(ユリア…)

一瞬二人の間にときめきを感じたアレーシャは残念そうな表情をする。



普段から男性に手厳しいユリアは官僚時代に色々と苦労したこともあって同年代の令嬢のように恋に恋する乙女ではなかった。


「失礼いたします」

「はい?」

「エンディミオン殿下から贈り物を」


侍女が大きな箱を持って現れる。


「ご苦労様です」

「失礼します」


テーブルに置かれた箱を開けると。


婚約祝と書かれていた。


「何かしら?」

リボンを解き中を確認すると銀色の食器だった。

「まぁ…綺麗」

「王族の紋章もついておりますね」


手紙と一緒に花も添えられている。


王族や身分の高い貴族の中には食器類は全て銀で統一することもある。

金色を好む夫人も多いが。
銀色の食器は派手過ぎず品がいいのだが、他にも意味合いを持っている。


「今日から使う様に‥‥ですって」

「銀色の食器に、ベコニアの花ですか」


アレーシャはこの食器と一緒に添えられている花を見てすぐに察した。


このタイミングで第二護衛騎士を専属越えに選んだ理由。


全てを照らし合わせる。


(誰かに狙われている?)

王族に入るのだから妬まれるのは仕方ない。
王に反感を持つ者がアレーシャを狙う可能性も考えたがそれだけでここまでの警備体制を敷くとは考えにくい。



カテリーナとルクレチアは結婚式が終わるまでは牢屋に捕らえられ、式が終わるまで罪人を閉じ込める特殊な塔の中に幽閉されることになっているし、あの二人がアレーシャを襲うことは無理だ。


(だとすれば…王族に反感を持つ方?)

まだ情報は少なすぎる。
目立つ動きはできないので息を顰め注意する必要がある。


「アレーシャ様?」

「なんでもないわ。では今日からこの食器を」

「かしこまりました」


結婚式までの期間。

出来る限り自分の身は自分で守らなくてはならないと感じたアレーシャは二人にこっそり手紙と花を用意しエンディミオンに届けるのだった。


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