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第三章栄華が終わる時
20.婚約者との会話
しおりを挟むアイシャはアーデルハイドがどうなったか知らなかった。
国外追放の身となった貴族は修道院に送らたとしても、最悪な結末が待っていた。
それが、貴族が送られる修道院であっても。
特に隣国の辺境地は厳しい土地で真面な診療所もないど田舎で、貴族が送られるような場所ではなかった。
高位貴族として何不自由なく過ごしてきたアーデルハイドが惨めな暮らしをしているはずだと。
もしかしたら辛過ぎて耐え切れなくなり自害をしているかもしれないと思っていたのに。
「ありえない…お姉様が…そんなはずはないわ!」
信じたくない気持ちだった。
自分はこんな惨めで不幸なのに、アーデルハイドは幸せなんて許せないのだ。
不幸でなくては。
惨めでなくては許せない。
「そんなはずないわ…そうよ、貴族籍から除籍されて、罪人になって幸せになるはずがないわ!」
そんな最中。
「アイシャ!」
「モーギュスト様?」
「久しぶりだな」
しばらく学校を休んでいたモーギュストが現れた。
「ええ、お久しぶりですね」
「会いたかったよ」
今までならばすぐに駆け寄り抱き着くが、アイシャの表情は冷たいものだった。
「私に何か御用でしょうか?」
「えっ…いや」
用がなくても婚約者ならば声をかけても不思議ではない。
なのにこの冷たい態度はなんなのだろうかと思った。
「用がないと声をかけては行けなかったか?」
「いいえ、そのような事は…」
今までならば天使のように愛らしい笑顔を向けていたのに冷めた目を送られ、モーギュストは驚くばかりだった。
「ようやく謹慎が解けたんだ」
「そうですか」
しばらく休んでいたモーギュストを心配する素振りも一切なかった。
そんな折だった。
「この後良かったらカフェテリアにでも行かないか…君との婚約のことでご両親にも挨拶に行かなくてはならないし」
「解りました…」
気が乗らないが、アイシャにはもう利用できる取り巻きはいない。
既に実家に帰されたり、謹慎処分になり学校を退学になったり、貴族籍を除籍されて頼ることはできなかった。
一応は侯爵家の次男であるので、いないよりもマシだと思っていた。
しかし二人は知らなかった。
モーギュストがこのタイミングで学園に戻ってこられた本当の意味も。
そしてギルビット家が降格になり、子爵家となった事など。
アイシャは何一つ知らなかった。
「シャリエール令嬢、ギルビット令息。学園長が及びです。ご同行ください」
二人がカフェテラスに行く途中、学園の警備隊に声をかけられる。
傍には生徒指導の教師も一緒だった。
「え?」
「大事なお話がございます」
「話?」
何の話かと思ったが、すぐに笑みを浮かべる。
学園内での他の生徒の態度の詫びだろうかと思った。
自分に都合のいいようにしか解釈しないアイシャは素直に同行し、モーギュストも大人しく後を追ったが。
この後さらに悲劇が襲うことになるのだった。
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