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第一章逆行した世界
6.寂しさ
しおりを挟む領地での生活から一変して、生活はガラリと変わった。
「なんか味がしない」
夕食時に、ブスくれながら料理に文句をつけていた。
「はしたないわよ。食事中にそんなことを言うなんて」
「はーい」
「語尾を伸ばすんじゃないの」
早速サングリアから指摘が入る。
困った子だと言いながらため息をつくも、隣で食事をするリリアンヌも同じく食事が進んでいなかった。
「マリーはずっと領地で過ごしていたのです。いきなりそのような言い方をするものではなくてよ」
「公爵令嬢として恥ずべき行為は今のうちに正すべきだと思います。何より未来の王妃としてマナーが成っていなければ我が家の恥となります」
「私も解っていますわ。けれど、雁字搦めにするのは良くないと言ってますのよ…まぁ、なんと傲慢なのかしらね?妹から婚約者を無理矢理引き離して悪びれることもないなんて」
「なっ…」
楽しいはずの晩餐会は最悪な空気が流れる。
双方に挟まれた両親は居心地が悪いが、どちらの良い分も間違っていない。
「お兄様、いくらなんでも甘やかっ過ぎですわよ。王都に不慣れな妹に配慮する所か、なんてそこ意地の悪いのかしら」
「お父様、私はマリーの為を思って言ってますのよ」
「うっ…うむ」
妹と娘に挟まれタジタジになる。
コレットも困った表情をする中、マリーは硬いパンを頑張って千切っている。
「叔母様、王都のパンは硬いのですね。領地のパンが恋しいです」
「そうね、けれど慣れなくてはダメよ」
「はい」
ずっと領地で柔らかいパンを食べていたマリーは王都のパンが口に合わず困っていたが、リリアンヌはこれから慣れなくてはダメだと優しく注意する。
「テーブルマナーもこれからしっかり教えますから。貴女は飲み込みが早いから大丈夫ですよ」
「がっ、頑張ります」
顔を引きつりながらも頷くマリーにリリアンヌは笑みを浮かべる。
対するサングリアとはどうしても馬が合わず、事務的な話をするだけだった。
「はぁー…困りましたわ」
「せめてもう少し仲良くして欲しいのだがな」
両親は妹と娘の仲が悪化しないか心配しながらも食事を勧める。
「食べた気がしない」
部屋に戻ってベッドで横になるマリーは硬いパンの感触が忘れられない。
そして何より、領地で過ごした賑やかな食卓が懐かしく感じる一方で、思ったのはサングリアの事だった。
「お姉様はあんな静かな場所で食事をしていたのかな」
久しく家族で食事をして思った。
領地では賑やかに過ごしながら食事をして色々話していた。
けれど、今日の食事の席ではサングリアも両親もあまり会話が弾んでいなかった気がする。
「王宮でも寂しくなかったのかな?」
窓から空を見上げながらふと思う。
生れた時から公爵家の長女として期待を背負い、王太子妃になる努力を強いられていた。
それはとても辛いことだ。
「私は耐えられるのかな…いや、婚約解消してもらうんだから!」
ないないと首を振りながら、マリーはそのまま眠りにつくのだった。
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