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第一章逆行した世界
9.誠実な思い
転生前のマリーは姉を捨て公爵家を没落に追い込んだアレクシスに思う所があった。
しかし、実際会ってみると考えが変わった。
優しくて気遣いのできる人だったのだ。
きっとサングリアとは縁が無かったのかもしれないが、公爵家の期待を背負う身としては婚約破棄を受け入れることはできなかったのかもしれない。
そして悪い条件が揃っていた。
だから今度はその条件を潰そうと思った。
「殿下、私は王太子妃には相応しくありません」
「そんなことは…」
「本来ならば優秀な姉が婚約者であった方がどれだけ良かったでしょう。ですが、どうか姉を咎めないでいただけませんか」
誰も幸せになれなかった過去を変えよう。
そして心優しいアレクシスにも幸せになって欲しいと思った。
「私は殿下に忠誠をお約束します。ですから私は貴方様に相応しい妃が現れるまでの間の中繋ぎとしてくださいませ」
「マリー嬢…」
迷いなくまっすぐな瞳だった。
邪心の欠片もなく、打算的な考えなどもない瞳にアレクシスは胸を痛めた。
「マリー嬢は私が嫌いか?」
「いいえ…」
「そうか」
普段から息が詰まるような場所にいて、完璧を求められる。
けれど今は完璧な王太子としての顔はなかった。
「君の考えは解った」
「では!」
快く了承して貰えたと思った事に安堵していたマリーは気づいていない。
アレクシスがどんな表情をしているのか。
そして後日、何故か…
「大変ですお嬢様ぁぁぁ!」
「うぇー…なぁに?カンナ」
専属侍女のカンナが朝っぱらから声を張り上げた。
早起きなマリーであるが、あまりにも早い時間だった。
「まだ鶏も起きていない時間ですよ?騒々しい」
「奥様!大変です…王宮から大量の贈り物が」
「は?」
朝一番の便で大量に届いた荷物には王家の紋章が刻まれていた。
「これは…」
「手紙が一緒に」
カンナは直ぐにリリアンヌに見せると王太子自らの直筆であることに気づき絶句した。
「なっ…なんですって!」
「叔母様、どうしたんですか?」
「アレクシス殿下より、正式に貴女を婚約者として迎えたいと」
「は?」
眠気が一気に冷める。
何かの間違いではないかと思ったのだが、荷物の中から青いリボンと青いドレスが入っていた。
「あの…」
「わが国の伝統を知ってますね」
「はい…」
貴族だけでなく平民の間で、女性に装飾品やドレスを送る行為は恋人を意味する。
しかも自分の瞳と同じ色のドレスを送る行為は求愛の証だった。
「何で?」
「私が聞きたいですわ!何をしたんです」
「えっと…」
真っ青な表情をするリリアンヌはふらりと立ちくらみが襲ってくる。
対する侍女のカンナに至っては。
「流石お嬢様ですわ!早速殿下を誑し込み…いえ、お心を掴んでしまわれるなんて」
さりげなく誑し込んだという言葉を耳にしながらもマリーは頭が痛かった。
昨日の顔合わせで自分の意思は伝えたし、アレクシスも解っていたはずなのに何故と思うのだった。
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