今日から悪役令嬢になります!~私が溺愛されてどうすんだ!

ユウ

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第二章もう一つのルート

19.チャールズの思い

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まだ領地に慣れていない、サングリアにこちらのやり方を押し付けるの酷だと思ったチャールズは見守ることにした。


強制して無理やり言うことをさせても意味がない。
自分から馴染もうと思わないと無理だと理解していたからだ。


とは言え、使用人に気を配りながら、サングリアを見守るにも限度があった。

チャールズは大人びていてもまだ13歳だった。
成人式を迎える前で、一人ですべてを背負うのは無理だった。


「チャールズ様、王都より手紙が」

「ありがとう」

侍女から手紙を受け取ると、宛名はマリーだった。

領地を出てから頻繁に手紙が届くようになった。


しかし内容は日記のようなものだったが。

「今日な何をしたんだ?」

日記のような手紙であっても、今のチャールズの心を癒してくれるモノだった。


「今日は…公爵家で釣りをして、母上に捕まりました」

早速吹き出しそうになる。

「母上も大変だな」

常にじっとしていられないマリーは王都でも健在だった。


「陛下も巻き込んだのか…流石に笑えないが、陛下と仲良くなったんだな」

手紙を読みながら、マリーも環境の違いに戸惑いながらも自分のペースで上手くやっていると知れて安心した。



「チャールズ様」

「マリーは陛下とも仲良くなり、頑張っているようだ」

「そうですか」


何処か寂しそうな表情をする侍女長に苦笑する。
チャールズ自身も内心では複雑な気持ちだったのだから仕方ない。


「マリーは王都で苦労すると思ったから心配していたんだ」

「本当にそれだけでございますか?」

「え?」

無理をして笑うチャールズに問いかける。

「私は、チャールズ様のお気持ちを知っておりますわ」

「タンブラー…」

二人は従兄妹同士でありながらも、強い絆があった。
恋慕の情のように激しい思いはなくとも互いに支え合いながら生きて来た。

「チャールズ様がマリー様をお慕いしているのを知っておりました」

「マリーは俺にとって妹のようなものだよ。それ以上の思いも確かにあったけど」

激しい思いではなく穏やかな愛情だった。
これも愛であるのは変わりないが、公爵家で決められたことを覆すこともできない。

拒否権すらないのだから。

「マリーがこれ以上傷つくぐらいなら、俺の我儘は封じようと思った。でも…」

決して言ってはいけないことを口した。
ずっと胸に秘めている思いを。

「万一にでも殿下がマリーを傷つけたならば許さない。伯父上であろうとも…」

ずっとマリーの傍で支え見て来た。
姉と比較され続け、苦しんできたマリーは領地で居場所を得ることができたのに。

いきなり姉が跡継ぎになると言い出した。
通常ならそんなことはありえないが、大人しく従った。

とは言え納得したわけではない。

「俺は、サングリアの領主としての器がないなら、あの話は断るつもりだ」

「チャールズ様」

「今の段階では、サングリアは領主代行以前に、この領地で生きていくことは難しい。まぁ領地でひっそり暮らすのであれば問題ないだろうが…」

ただの貴族令嬢として静かに暮らし、下位の貴族に嫁ぐという意味だった。



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