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第二章もう一つのルート
21.表明
しおりを挟むマリーの突拍子もない行動の数々はいい方向に進んだ。
病床に伏していた王妃は回復して、現在は一人で歩けるようにまで回復していた。
最近は社交界に姿を見せるようになり、虫のきだと馬鹿にしていた貴族を驚かせ。
しかも病に倒れる前よりも若々しさと美しさに威厳があふれていた。
「なんて美しいの…」
「以前よりも、気品が増しているわ」
王宮で行われた舞踏会で誰もが釘付けになるほどの美しさを見せつけ、敵対していた貴族夫人は不愉快な思いでいっぱいになった。
何故なら、王妃が公の場に出なくなってからは我こそが王妃の後釜に収まる気でいた。
彼女達は貴族の中でも容姿に自信があったからだ。
しかし、その自身すら奪われていた。
「王妃様のお肌の艶…まるで真珠のように輝いてますわ」
「お肌だけでありませんわ。絹のように美しい御髪」
宮廷貴族内では、肌を美しく保つために化粧を濃い目にしている。
髪も小麦粉を使って片目で巻き毛を美しく見せるのだが、艶やかな髪とは言い難かった。
「それに、ドレスも素敵」
「ええ、見たことがないデザインですわね」
誰もが魅入ってしまう状況に、敵対していた貴族夫人や令嬢は屈辱的だった。
誰も自分達に見向きもしないのだから。
「皆、今日はよく来てくれた。王妃も無事回復した」
「陛下!」
「この日を待っておりましたぞ」
王族派の貴族は王妃の無事の生還を心から喜んだ。
「うむ、私も愛する妻が元気になり嬉しく思う。立て続けて喜ばしい知らせがある」
「なんですかな?」
「この場を借りて報告したい。我が息子アレクシスの正式な婚約が決まった」
一瞬で会場はざわめく。
知っていた側近は驚きはしなかったが、敵対する派閥は顔を顰める。
「陛下、婚約者の候補の方ですかな?」
「いや、アレクシスの婚約者は一人だ。他の候補は必要ない」
「誠ですか!」
婚約者候補と、正式な婚約者では意味が違う。
「この場を借りてお披露目とする」
「さぁ、マリー」
アレクシスに手を引かれながら初めて公の場に姿を見せる。
「マリー・サンチェストにございます」
「この日を持って、私は彼女を正式な婚約者とすることを誓う」
歓喜の声と一緒に不満を抱く者達の視線を察するアレクシスがマリーの手を握る。
「殿下?」
「大丈夫だ。君は何も心配しなくていい」
まだ時期尚早という声もあったが、踏み切ったのはアレクシスだった。
一日も早くマリーを婚約者として公にお披露目したいと思ったのと同時に、マリーを認めさせたかった。
姉の身代わりとして婚約者になったことを知る者は多い。
だからこそ公の場で証明したかった。
「皆も様々な噂を耳にしているが、彼女の姉が婚約候補だったのは手違いだ。マリーこそが私の正式な婚約者であり私が望んだ。その意味を間違えないように」
「何…」
「そうだったのか!なんと情熱的な」
好意的な貴族はアレクシスの情熱的な行動にエールを送るも、敵対する貴族からすれば面白くなかった。
最初は傀儡にする程度しか考えていなかったのに、正式な婚約者に選ばれ。
あげくの果てには王太子妃と宣言されては厄介だと睨みつけた。
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