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第三章悪役令嬢の道
12.不幸な手紙
しおりを挟むお茶会から数日後、キャメロン家から大量の茶葉が届いた。
「わぁ!すごい」
「なんですか、この茶葉の数は!」
玄関には茶葉の入った箱で埋め尽くされ、リリアンヌは声を上げた。
「マリー」
「伯母様、これで当分は茶葉を買わなくていいですね!」
「そうではありません…事情を」
聞かなくても原因はマリーだと思ったが、事情を詳しく聞こうとしたのだが。
「ひぃ!」
「なんですアンナ!」
「キャメロン伯爵家からでございます」
「なんですって!」
小包に刻まれている家紋を見てアンナが悲鳴を上げる。
「キャメロン家と言えば西を支配する辺境伯爵家ではありませんか!」
「はっ…はい、キャメロン辺境伯爵様は王族派ですが、我が家とは友好な関係とは言い難いお家ですわ。ああ…また胃が」
「奥様!」
次から次へと問題を起こすマリーに頭が痛かった。
「伯母様、今からお茶にしましょう。あら?もう一つあるわ」
「マリー、よく聞きなさい」
リリアンヌは、辺境地にいたから貴族の対立関係をすべて把握していないマリーに今からじっくり叩き込むべきだと思った。
貴族派と王族派の貴族達は相容れない存在であり、何度も血の雨を降らせてきた関係でもある。
中立を貫く貴族も同様だった。
敵ではないが味方でもない微妙な関係であり、特にキャメロン家は辺境伯爵という立場でありながらも王家から一目置かれる家柄だった。
下手に関わり、弱みを握られたらどうなるか解らないので、関わらなう方が良いと思ったのだが。
「あれ?これだけ茶葉の箱が違うわ…すごく綺麗」
「お嬢様!それは…」
「なんで家紋入りの箱に…あっ、貴女は何をしたのです!」
貴族の間で家紋入りの箱に入った。
特にアンティークの箱に入れられた贈り物には特別の意味がある。
同性ならば親愛の情を込めた意味。
異性なら好意的な意味を込められてるので、マリーに対して好意的だと知り大慌てをする二人。
「私からの心ばかりの気持ちです。お受け取りいただけると幸いです」
「「ああああ!!」」
手紙を読み上げると二人は頭を抱えた。
シンプルな文章だが、深読みするまでもなく、マリーに対する好意が読めた。
「どっ、どうしましょう奥様」
「下手に相手を刺激してはなりません。敵に回せば我が公爵家はどうまりますしょうか」
「では…」
贈り物を返すなんて無礼をすればどうなるか解らない。
特に辺境貴族は下に見られがちだが、東西南北を守護する伯爵家は重要な役目を担い、兵の数も半端ない。
キャメロン家も同様だった。
家格だけで言えばサンチェスト家の方が上だが、敵に回したくなかった。
「いいですか、マリー」
こうなったら当たり障りのない付き合いをするしかないと思いきや。
「今度、お茶会が催されるらしいんですって!是非良かったらですって!」
「マリー…」
なんとか止めようと思ったが、叶わなくなる。
何故なら誘われたお茶会が問題だった。
「なんで侯爵家…しかもスペンサー侯爵家ですって」
「ああ!」
高位貴族でもあり、国内でも資産家として有名なスペンサー家のお茶会の招待状だった。
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