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第三章悪役令嬢の道
22.悔い改める思い
しおりを挟む急遽決まったお泊り会でサンチェスト家は大混乱だった。
「マリーが早速お友達を連れて来てくれるなんて」
しかし、ここに一名。
この状況ですら喜ぶ大物がいた。
「お義姉様」
「コレット様」
少し前までは一緒に頭を抱えていたが、コレットは娘が友達を邸に招待した事が嬉しかった。
「サングリアは邸に友人を連れて来る所か紹介もしてくれなかったから、嬉しいわ」
「お義姉様、そういう問題では」
「紹介しなかったのではなくできなかったのだと思いますよ?あの方は知人はいましたが」
アンナは無礼承知で言い放つ。
記憶には傲慢で我儘な態度が目立つサングリア。
貴族令嬢として、気高くあることは重要視されるが。
傍若無人な態度では誰もついてこないだろうし、王太子の婚約者候補だったことから、さらに尊大な態度を取り、尚且つ公爵令嬢としての振る舞いを何処かで勘違いしたのかもしれない。
「言うわねアンナ」
「マリー様は他人の懐に入ることに関しては右に出る者はいないかと」
「そうね」
上機嫌で鼻歌を歌うコレットにこっそり話す二人。
実の娘が実は、社交界で一人も心を許せる友人がいないなんて知ればショックを受けるだろう。
対するマリーは初めて参加したお茶会で友人を得て、しかもその日の邸に招待していた。
「今夜のディナーは賑やかになるわね!料理長にお願いしてとびきりのメニューを用意していただかないとね!その前にお茶を用意し無いと…ああ、ご挨拶もしないと」
「お義姉様、はしゃいでますね」
「だって嬉しいじゃない?」
離れて暮らしていたマリーが王都で同年代の令嬢と仲良くなれた事が嬉しかった。
「あの子は浮世離れしているから、社交界で友人ができるか不安だったの。でも心配し過ぎだったわね」
「まぁ…それは」
「リリアンヌの心配も解りますわ。でも、マリーを好きだと言ってくださる令嬢がいたことが何より嬉しいのです」
コレットは領地ならば上手くやっていけたが、勝手が違う王都では色々苦労するだろうと思っていた。
「派閥の事は後から考えればいいわ。それに」
「なんです?」
「私はずっと思っていたことがあります」
二つの勢力に割れた貴族を一つにするためにも考えていたことがある。
「これからの時代は若い方に作っていただきたいと思っています。故に、子供達に、王族派の貴族と、貴族派の貴族の敵対関係を壊してほしいのです」
「お義姉様」
「私達貴族は王家を、国を守る存在です。その為にも新貴族も旧貴族の手を取り合って行く必要があると考えていました」
頼りなさげに見えるコレットであるが、サンチェスト公爵家の女主人としての器はしっかり持っていた。
母親としては未熟であるが、コレットは自分の至らなさを認め改めようとする潔さも持ち合わせている。
「マリーを良い子に育ててくださった貴女やお義母様にも感謝してますわ。あの子はきっと素晴らしい令嬢に育つでしょう…私は信じています」
「お義姉様、私が間違っておりましたわ。そうです…も少しあの子を信じて上げなくては」
涙を浮かべながら感動するリリアンヌ。
この邸に来てすぐの頃は、コレットに思うところがあったが、母親として愛情を持って接していないわけではなかった。
年に数回がしか領地に来なくとも、誕生日は必ず祝っていたし。
手紙だって頻繁に送って来たではないかと思う。
コレットなりに苦労していたはずなのに、リリアンヌは一方的に責めるた過去の自分を詫びた。
「いいのですわ。私も母親として至らなかった。サングリアを優先してしまったのも事実です」
もう間違わない。
これからは娘達と向き合っていきたいと心から思った二人は互いに笑顔を浮かべた。
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