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第四章.魔法学園
21.二人きりで勉強会
しおりを挟むアネットからはあまり好かれていないのではないか?と不安に思っていたマリーは杞憂だと思い、安堵していた。
よく考えればアネットは平民であるので貴族と簡単に言葉を交わすなんてありえない事だった。
だから、嫌われている訳ではない。
距離があって当然なのに困っているマリーを助けてくれるアネットはなんて親切なのだろうかと思う。
(優しくて可愛い女の子だな…)
初対面の時から色々やらかしてしまっているのに、偏見の目を持たずにいてくれたマリーはきっといい子なのだろうと思った。
(それにしても…)
図書館で勉強を見てもらいながら、アネットのノートを見ると書き込みだらけだった。
ノートも古く紙の質が悪いものだった。
筆記用具も貴族達が使うような筆ペンや万年筆ではなく黒鉛を使っている。
王都では平民でも価格が安いペンを販売しているけど、地方までは出回っていないのだろうかと思いながらため息をつく。
「少し休憩にしましょうか?」
「あっ…ごめんなさい」
教えてもらっている立場でありながら、ため息をついてしまったことを後悔する。
「そうだわ!私、お菓子を…」
ポシェットに手を入れるも。
(しまったぁぁぁ!)
常に携帯しているお菓子は休憩時間に食べてしまってお菓子がなかった。
「どうしました?」
「キャンドルさん…ごめんなさい。お菓子がないわ」
勉強を見てもらっていながらお菓子一つも用意できない自分をふがいなく思う。
「気にしないでください…お菓子なら」
アネットがポケットから出したのはハンカチに包まれたクッキーだった。
「わぁ、可愛い」
「その、お口に合うか解りませんが」
「重ね重ね、なんて親切なのかしら」
涙目で見つめるマリーは謝りながらクッキーを食べると。
「美味しい!キャンドルさんはお菓子作りの天才ね!」
「ありがとうございます」
王都で食べて来た高級なお菓子は美味しいが、マリーが好むお菓子は幼少期から食べて来た素朴な手作り感のあるお菓子だった。
「すごく美味しい」
「よろしければこちらもどうぞ」
あまりにも幸せそうに食べるマリーを見て他のお菓子を差し出す。
「キャラメル!」
「え?マリー様はキャラメルをご存じだったのですか?」
貴族社会ではキャラメルを食べる習慣はなく、高価なチョコやケーキを食べることが多かった。
キャラメルは、田舎のお菓子とされていた。
「私が幼い頃過ごした領地では、よくキャラメルを食べていたの。食べ過ぎてお腹を壊したぐらい大好きなの!」
「そう…なんですか」
「この歯にくっつく感覚に、この甘さがたまらない!」
至福の時を感じるマリーはアネットがどんな表情かなんて気づくことはなかった。
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