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第四章.魔法学園
29.恨みの理由
しおりを挟む逃げるように去って行くサングリアは通り過ぎる生徒達は誰も声をかけることはなかった。
癇癪を起した、サングリアを気にかけるどころか冷たい視線を向けるばかりだった。
そしてその後、午後の授業には戻ってくることはなかった。
「結局、教室にも戻らなかったか」
「サボるとは…」
基本真面目なフィリップは授業をサボるなんてことはしない。
「しかし、あそこまで酷いとは…サングリア嬢はあそこまで気性が荒かったか?」
婚約候補で顔合わせをしたのは十年近く前だったが、その時は少しばかり気が強いぐらいだった。
公爵家の長女としてある程度、厳格さと尊大さを持つのはおかしい事ではないが、公衆の面前でああいった行動をするのは褒められることではない。
ジョアンナのように上手く受け流せなくとも、無駄なことを言わない方がかしこいのだが…。
「俺も、幼い頃に会った時はここまで酷くなかったのですが…五年前に領地に来てから少し」
「素直に傲慢で我儘と言えばいい。チャールズが庇う理由が何処にある」
「少しばかり責任があるんだ。彼女が公爵家を継ぐはずだったのを奪う形に合ったんだ」
当初はチャールズは補佐的な役割をする予定だったが、サングリアの態度が改善されることがなく、領民や近隣の領主とも問題を起こすあまりに、領主として相応しくないと判断されてしまった。
代わりにチャールズが次期公爵として選ばれてしまった。
婚約も解消となる手筈となっているが、まだ公にされていなかったが、時間の問題かもしれないと思っていた。
「マリーにきつく当たるのも、彼女が孤独だからなのかもしれない」
「だとしても、マリーは、不慣れな王都で努力していた。非はない」
アレクシスはマリーが責められるなんて理不尽だと思った。
五年間、ずっと頑張って来たのを傍で見て来たし、今でも必死に頑張っているのだから。
「マリーはサングリアを慕っていますが…サングリアは」
「言わなくても解る。しかし、酷すぎる」
「やはり、マリーと引きはすべきだろう」
三人は頭を抱えながら困った表情をする中、一人だけ空気を読まない男が現れる。
「色男が頭を抱えてどうしたんだ?」
「馬鹿男が」
フィリップが舌打ちをする。
「何でもない」
チャールズも顔には出さなかったが、内心では嫌だった。
一番顔に出しているのはアレクシスだった。
「何の用だヒューゴ」
場の空気を読んで欲しいと思いながらも一応無視はしなかったが、本人はヘラヘラ笑いながらとんでもない事を言い放つ。
「いやぁ、あの猿女、やらかしてくれたな。妹に婚約者を奪われた哀れな女的な噂が流れているんだけど」
「「「は?」」」
「十中八九、猿女が流してんだろうけど」
さらに頭を抱えるチャールズは死んだ目をした。
「何でそんな噂を」
「まぁ、馬鹿以外は信じてないけど」
「馬鹿は信じているってことだろ!」
さらなる問題が浮上し、彼等の悩みは増える一方だった。
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