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最終章.自称悪役令嬢の果て
4.差別問題
しおりを挟む悪い空気の中、タイミング良く、馬車が戻って来た。
「たいだいま戻りました」
「おかえりなさいませマリー様、予定より遅かったので心配いたしましたわ」
「ごめんなさいアネット…皆さんもお揃いで」
一番最初に出迎えてくれたのは、アネットだった。
続いてチャールズやフィリップも駆け寄り心配してくれていた。
「少し王妃陛下とグレース妃と話し込んでいて」
「何もなければそれでいいのですが…どうしましたの?顔色が良くありませんわよ」
ジョアンナはマリーの表情を見てすぐに体調がすぐれないのを見抜いた。
「いえ、何でもありません」
「マリー様、私を欺くなど百年早いですわよ?」
「ジョアンナ様ぁー…」
涙目で見つめるマリーはジョアンナにしがみ付く。
「何か意地悪をされましたの?グレースおば様がマリー様に意地悪とするとは思えませんわ」
「言っておくが母上もありえん…」
ジョアンナの言葉に間を置くことなく告げるアレクシス。
我が母ながら常にマリーを溺愛しているので、プライベートな時間に意地悪を言うのはありえないとも思った。
「私は何も知りませんでした…外の世界の事を」
「外の世界?」
「私は井の中の蛙でずっとぬるま湯の…いいえ、温室の中でぬくぬく育っていたんです」
べぞべそ泣きながら自分の不甲斐なさを恥じるマリーはお茶会での事を話した。
女性でありながら不当な扱いを受ける者。
才能がるのに他民族というだけで認められず人間以下の扱いを受ける者達。
何一つできない自分が不甲斐ないと嘆くマリーに居た堪れない気持ちになる一同。
「確かに我が国でも、一部の他民族を人として扱わない者もいる。奴隷を買う貴族もいる」
「私の聞いたことがありますよ…人身売買は法律で禁じられていますが。所詮は表の法律。裏社会では法律など無意味です」
「お父様も嘆いていましたわ。どんなに取り締まっても、甘い汁を吸い、食虫植物のような輩がいると」
フィリップの言葉にチャールズが頷き、リーゼリットも眉を下げながら告げる。
「貴族は特権を持つ故に義務もありますわ。ですが、その義務を理解している貴族が何人いるのか…恥ずかしながら私の姉達もその義務を理解しておりません」
「ロゼリア様…」
今後国を動かすことになる地位にいる一同は、格差社会をどうすべきか課題となる。
「国の九割は平民です。しかも、ほとんどの女性が表舞台に立つことを良しとされておりません。未婚の女性は特に…」
「だが結婚した女性を家庭に縛り付け外に出すことを拒む男性は多いですわ。貴族も同じです」
「結婚しなければ発言権もないのに、結婚しても妻が仕事を持つ事を許さない…矛盾した秩序です。少なくとも辺境地ではそのような事を言ってられませんわ」
平民でも貴族でも女性が表舞台に立てるのは限られた人間だけだった。
身分以外でも差別はまだまだあるのだが、このままでは国の存続や経済に関しても危ないと危惧する声もあるのだった。
マリー自身も歯がゆく感じていた。
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