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最終章.自称悪役令嬢の果て
5.前進
しおりを挟むこれまでマリーは自分と家族の幸せばかり考えていた。
逆行する前の時間と同じ悲劇を繰り返さないようにしなくてはならないとばかり関上げていたが、自分の取り巻く環境のその裏側を見ようとしていなかった。
(私、最低だ…自分勝手だ)
隣国だけでなく、他の国でも女性は人としての尊厳を奪われて過ごしている人が多い。
もっとちゃんと学ばなければいけなかった。
「マリー様?」
「あっ…アネット」
真夜中まで寮内にある図書室で本を読んでいたマリーを心配して迎えに来たアネットはカーディガンをかけた。
「もうお休みになってください。体を壊します」
「うん、これ読んだら寝るから」
「マリー様は気になされているのですね」
散らばる本を見てため息を付かずにいられなかった。
人身差別や、発展途上国の国に関する本を拾いながらアネットはどうしたものかと思った。
「私、ずっと辺境地にいたわ。領民の皆は差別なんてなかったの。領地には男性よりも女性の方が多かった事もあるけど、お祖父様が紳士だったから」
サンチェスト家では男尊女卑を良しとしていなかった事もあり領民達も差別はなかった。
格差はあれど、女性だからどうということは一切なかった。
しかし、一部に過ぎなかった。
王都では身分差別は酷く、学園でも酷かった事をヒシヒシ感じた。
かくいうサングリアも差別式が強いが、貴族と平民では立場が違い過ぎるので仕方ない部分もある。
だが、人として認めないのは違うんじゃないのかとも思った。
「マリー様、人は弱い生き物です。自分より優れている者を妬み、自分より劣っている者を見下し虐げる。弱肉強食なのかもしれません」
「動物は違うわ…弱肉強食でも、食べる分だけしか殺生はしない。でも人間は欲が尽きない」
「そうです。何処までも欲深く愚かで弱い…一人では生きて行けない弱い種族です」
そっとマリーの手を握りながら囁く。
「私も一人でした…学園に来る前も、学園に来てすぐも。一人で自分の心を守る為に周りを恐れていました」
「アネット…」
「ですが私は恐れではなく、人の優しさを教わりました。一人ぼっちだった私には友達ができて、居場所ができて…好きか方にも出会えて、幸せが訪れました」
心から思うアネット。
もしマリーに出会わなければ今も一人だったかもしれない。
「名もなき人達も心が凍える様な思いをしているのかもしれません。誰かに認められたくて、でもできなくて」
「私、どうにかしたい」
「ですが、長年続いて来た秩序を覆すのは難しいんです」
アネットの言っていることは正しかった。
未だに男性社会である世で、いきなり変えるなんて無理かもしれない。
「きっと、私達が生きている間は無理だろうね?」
「はい?」
「百年…もっと時間がかかるかもしれない」
気が長くなるような時間が必要かもしれないが、ダメだと思っていたら何もできない。
(そうよ、動かなきゃ何もできない。私は一流の悪役令嬢となるんだから!何事も当たって砕けよだわ!)
マリーは未だに頓珍漢な事を考えていた。
(悪役令嬢は常に自分の思念を貫くべし!)
常に携帯している聖書を抱きしめながら立ち上がる。
「決めたわ!」
「マリー様、もう遅い時間ですよ」
日付が変わるのに大きな声を出すマリーを止めるも、気持ちを切り替えたマリーは誰にも止められなかった。
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