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最終章.自称悪役令嬢の果て
18.価値のない物
しおりを挟む風はどんな魔力も動かすことができる。
水や炎でも風で動かすことが可能だったが、より強い魔力を持ってなくては不可能だった。
「リーゼ!」
「お兄様、私は生まれて初めて人を殺してやりたいと思いましたわ」
リーゼリットが風を操りサングリアを拘束した。
「こんな女、生かす価値もありません」
「殺す価値なんてないだろう…」
「生かして置けば、他に被害者がでるではありませんか!もう黙ってられません。私を救ってくださった親友をここまで傷つけるなんて許せません!化け物と呼ばれ、体が弱く出来損ないと呼ばれた私を愛してくださったマリー様を!」
「リーゼ」
涙ながらに訴え、サングリアを殺そうとするリーゼリットの気持ちが痛いほど解った。
家族以外は敵でしかなかったからこそ、マリーの存在は心の支えとなっていたのだから当然かもしれない。
「リーゼ様お一人に背負わせませんわ。私だってマリー様の為に鬼になって見せますわ」
「ロザリア様、美味しい所を持って行かないでくださいませ。マリー様の一番の親友として譲れません」
「あら、聞き捨てなりませんわね?マリー様の教育係であり姉代わりの私に喧嘩を売る気ですの?」
何時の間にかマリーの親友の座を争う場となっていた。
「いや、今はそんな低次元な争いをしている場合では」
「そうです!」
「流石アネット」
チャールズは安堵する。
常識人がいたことに心の底からホッとしたかのように思えたが…
「マリー様の親友は私ですわ!」
「アネットォォォ!!」
本丸はアネットだった。
「待て、マリーの婚約者は私だ。一番は譲らない」
「お黙りなさいませ。夫など紙よりも薄い関係ではありませんか?心が繋がった友の方がずっと信頼が強いですわ」
「ジョアンナ!そんなに私が気に入らないのか」
「ヘタレですわね?この程度の事で傷つくなんて…これだから軟弱な男は」
最初こそはカッコ良かったのにジョアンナに虐げられるのは変わらなかった。
「取り合ず、サングリアをどうにかした方が良いんじゃないか?」
「フィリップ…」
「ある程度痛めつけたから拘束は簡単だ」
苦労人二人が話し合いながら、サングリアをそのまま拘束する事ができた。
ある意味橋の下の力持ちはこの二人だった。
そして消火活動が終わる頃。
「何事です!」
「この火事は一体…」
教師陣が大急ぎで駆けつけたのだった。
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