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序章
4可愛い嫁
私には可愛い嫁がいる。
あの堅物で、真面目過ぎる馬鹿息子には出来過ぎる嫁だった。
私は夫と大恋愛の果てに結ばれ結婚した。
結婚して十年目でようやく子供を授かった私は色々噂をされながらも強くあろうと思ってこれまで踏ん張って来た。
夫はアンリが幼い頃に亡くなり私は女手一つでアンリを育てて来た。
傾きかけた家を建て直す為に苦労したけど仕事に誇りを持って息子にも教えて来た。
最高の教育をして、社交界に出ても恥ずかしくないようにと教えて来た。
そんな折、紹介されたのが同じ学校で特待生の女子生徒のマリーちゃんだった。
彼女はとても頑張り屋だった。
控えめであるけど向学心旺盛で、何でもズバズバ言ってしまう私とは正反対の女の子。
だけど、とっても聡明だった。
あの堅物なアンリが惚れこんだだけはあるわ。
だけど家族関係はあまり良くないと聞いていた。
貴族のお嬢さんで、母親は何かと兄を優遇してマリーちゃんに冷たく接していたのに。
結婚してしばらくして兄君が結婚すると聞かされた頃。
アンリから手紙が来て、もしかしたらランフォード家から追い出されるかもしれないと書かれていた。
いくら何でもないと思っていた。
だって傾きかけたランフォード家を建て直したのは二人だわ。
何より身一つで追い出されるとは考えてなかったけど。
その一週間後、アンリの不安は的中した。
手紙が届き、私は唖然とした。
お腹を痛めて産んだ子供に対してどうしてと思った。
だけどその一方で思っていた。
マリーちゃんを要らないというなら私がと思った。
本当は近くに邸を建てて、私の眼が届く範囲にいてくれたら。
同居は嫌がられるからそこまで望まないわ。
でも、何かあったら会える距離が良いと思っていたのだから。
私には子供はアンリしかいない。
遺産は全てアンリに渡るけど、この際マリーちゃんに養子縁組をして遺産を相続させても良いわ。
戸籍上の問題で遺産を相続するには養子縁組をしないといけないけど、ランフォード家はマリーちゃんがどれ程の存在か理解していない。
自ら宝を手放すならもう返す気はないわ。
「誰か、馬車を用意なさい」
この後私は急いで旅の手配と弁護士を呼ぶことにした。
万一の時に備えて。
そしてアンリとマリーちゃんを迎えに行くと雨に濡れる姿を見た時は耐え切れず涙が零れた。
こんな寒い時期にあんな薄着で放り出すなんて!
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