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第一章
8不信感
しおりを挟む「こちらのデザインはいかがですか」
「まぁ素敵」
服飾を営んでいる店ではオーダーメイドをする客はお得意様になる。
商会の中に入り内情を調べることができる。
会員になればお得様の特権が手に入るが、個人情報を記入する事になる。
「でも少し心配な事が」
「はい?」
「こちらでは個人情報の管理はどうなっているのかしら?漏れてしまうと困ります。うちの人は文官で上司があの氷の長官でしょう?」
「ご心配には及びません。お客様の大事な情報は金庫に厳重に保管しますので。ご安心ください」
金庫は特殊な作り。
だけど私なら簡単にできるわ。
「けれど万一商品に何かあったら…」
「アフタフォローも万全です。お買い求めいただいて三か月は保証されます」
「そうですか。それを聞いて安心しました」
三か月の保証期間。
「ただし破損が酷い場合は保証料金を支払っていただくことになります」
「構いませんわ。買いなおせば済みますけど、世界に一着しかないドレスを作っていただくのですから」
「ええお任せください」
テーブルの下に録音機を設置。
そして防犯道具の確認をすると天井の一つ、窓側。
万一侵入した時、セキュリティーを抜ける方法は。
「ん?」
床がおかしい。
足を置いて叩くと違和感を感じる。
若干床が浮いていると感じた。
「あの商会の作りは木造のはずなのに床がおかしいわ」
「床を別で後から作り直したって事は何かを隠している可能性がある」
「今夜決行するわよ」
「了解だ」
カスケード商会に行った後に私達三人は集まり、今夜中に動く事を話し合った。
私が客を装って侵入した時に店内の様子を見たけど。
おかしい箇所が多い。
「何かを隠している」
「重大な何かを隠している可能性がある。それを暴こう」
私達があいつ等の悪事を暴くと同時にもう一つやらなくてはならないのは。
「ボロネーゼ伯爵夫人だが、こちらで保護することにした」
「クーさん」
「知り合いに医師がいる。万一の時にだ」
未だに意識が目覚めていない状況だからこそ、敵側の手が下るのは危険だ。
「あのお嬢様の使用人だったか…毎日のように見舞いに来ているよ」
「ああ、見習い執事らしいな」
ボローネ伯爵家で見習い執事をしておりリナ嬢とは物心がつく前から一緒に育ったと聞く。
商人としての才能を持ち、右腕としても活躍していると。
「二人が浅からぬ関係なのは解りやすいわね」
「キャシー」
「その名で呼ばないで」
幼い頃の愛称で呼ぶアルフレッドを睨みつける。
さぁ仕事の時間だ。
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