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第一章
5白の聖女
しおりを挟む王都に戻る前に国境を超える道にて。
「団長、少し寄り道をしていただけますか」
「かまいませんが、どちらに」
「時間は取らせませんので」
焼けた村や、魔物により被害を受けた民を見て寄り道を頼む。
「できましたら目立たぬようにお願いします」
「よろしいのですか」
「はい、神殿の使者と名乗ってください。聖女が来たなんて言えば大騒ぎになります」
ジュリエットは聖女であると豪語して聖地巡礼をする事を良く思っていなかった。
戦場で同行した時にも焼けた村に訪れ、負傷した民を救う際も、聖職者を名乗っているだけだった。
「聖女とはただ美しい花ではありません」
特別な存在だと聞かされてもジュリエットは否定していた。
「苦しんでいる人を救えない聖女が、特別すかでしょうか」
「しかし貴女様は…」
「ただの人、女神様に力を与えられた民に過ぎないのです」
騎士のように剣を持つ事もなく。
戦場で命を散らすわけでもないのに神聖な存在として持てはやされる。
「聖女は特別な人間がなれるのではありません。少なくとも私はそう思っていますよ」
「ジュリエット様…」
王宮に集う聖女は知っているのだろうか。
日に日に国が困窮する中民の切望は深まるばかり。
聖女だから特別に思われるだけの功績はないのに、賛美されることにジュリエットは苦しんでいた。
それでも聖女の存在は救いになっていた。
「食料は僅かですがありますね」
「はい…ですがこれらすべては」
戦場に持ち込んだ食料はすべてジュリエットの得た収入だった。
一年前に亡くなった父に代わり爵位を継承しているのである程度の収入はある。
収入と言っても食料で金銭的なモノではなく。
財となる者は婚約者のオルヴィスが管理する名目で没収されている。
下手に財を持てばクーデターを起こされると思ったのだろうが。
継承される前にジュリエットは内々に信頼できる者に頼み込みお金は寄付に当てて後は食料に変えていた。
ジュリエットの父、ゴスペルは全てを察して先手を打っていた。
万一自分に何かあればジュリエットを飼い殺しにする為に領地を奪い、全てを奪うと考え信頼できる執事に財を任せ生前遺産を渡し、領民が困らないようにお金は食料に変え、貧しい国にできるだけ寄付をしていた。
貴族社会で慈善事業は美徳とされているので文句は言われない。
特にゴスペルが多額の寄付をしたのは貧しい国や、小さな島国だった。
お金にもならない果物園や薬草農園に野菜畑に貴族が口にしない穀物の畑にオルヴィスは興味も持たなかったのでそのままジュリエットが管理することになったのだが、そこで得た食料をこっそり教会や食料が不足している騎士団に寄付していた。
今回も戦争で焼けた村に匿名で寄付したのだった。
「ありがとうございます!」
「なんとお礼を言って良いか」
「いいえ、この程度しかできませんが」
村長に聖職者だと名乗り、食料と薬草を寄付して名前は名乗らず去るジュリエットに村人達はいつしか。
「白いの聖女様、ありがとうございます」
国民の聖女様と崇められるようになったことをジュリエット本人は知らなかった。
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