聖女でなくなったので婚約破棄されましたが、幸せになります。

ユウ

文字の大きさ
16 / 72
第一章

14後見人

しおりを挟む





ずっと冷たい聖女だと思われていた。
父親の訃報を聞かされても涙一つ流さず、どんな辛い修業も耐えて、愚痴一つ零さなかったジュリエットを人形のように思っていた貴族も少なく無い。


「ごめんなさい…私」

「いいんだ。ずっと感情を殺して来たんだ。君はもう聖女じゃない。無理に笑う事もないんだから」


優しくジュリエットの涙を拭うアルフレッドに安堵の表情を向ける。


その表情はとても美しいものだった。


「アルフレッド!」

「レイン、すまない。心配をかけた」

「もう良い」


本来ならば無礼に当たるが、レインは言わずにいれなかった。
この五年どれだけ悔しい思いをしたか。

親友の訃報、ジュリエットの冷遇に。


「お前が生きてくれていただけで十分だ。これでジュリエット様は救われる」

「レイン」


身分は違えど二人の友情に変わりはなかった。


「陛下、私はこの度を思って騎士団を辞めさせていただきます」

「何だと!」

「私はローチェスト伯爵より生前より後見人を任せれておりました。ジュリエット様がこの国を出るならば私も同行させていただきます」


「出て行きたいなら出て行く良い!役立たずが!」



以前からジュリエットを庇う余り態度が生意気だと思われていたレインに国王は言い放つ。


「出て行きたくば好きにしろ!騎士団団長として役目を放棄した愚か者めが!」


「ありがとうございます」


「隣国に出てもお前は騎士として役目を全うできなかった愚かな騎士と噂が流れるだろうがな」

「自分の責任は自分で取ります」


最後まで国王に敬意を持たないレインに国王は内心で苛立つ。


(落ちこぼれ聖女と心中すればよい!)


国を出た後待っている末路は決まっていると思いながらも、二度と祖国の土を踏めないようにしてやろうと思った。


「では参りましょうか」

「ああ、すまなかったな」


ハクセンス王国の使者に声をかけられ、王宮を後にする。



「待って!」


アルフレッドに手を引かれその場を去ろうとするも。



「本当に出て行く気?冗談よね」


「ミーシャ、私はもう聖女ではないわ。これはもう必要ないわね」


黄金の弓矢を差し出す。


「貴女に譲るわ。魔物を浄化するのに必要だし」


「そんな…待って。行かないで!」


真っ青な表情になるも、ジュリエットは無理矢理な形で弓矢を渡す。


「どうか貴方に神様のお恵みがありますように」


「ジュリエット!」

「ごきげんよう」


王宮に何の未練もない。
苦痛の日々を過ごしていただけだった。


だから必要ないなら出てい行くことに躊躇いはなかった。




しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された竜好き令嬢は黒竜様に溺愛される。残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ

水無瀬
ファンタジー
竜が好きで、三度のご飯より竜研究に没頭していた侯爵令嬢の私は、婚約者の王太子から婚約破棄を突きつけられる。 それだけでなく、この国をずっと守護してきた黒竜様を捨てると言うの。 黒竜様のことをずっと研究してきた私も、見せしめとして処刑されてしまうらしいです。 叶うなら、死ぬ前に一度でいいから黒竜様に会ってみたかったな。 ですが、私は知らなかった。 黒竜様はずっと私のそばで、私を見守ってくれていたのだ。 残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ?

結婚式の日に婚約者を勇者に奪われた間抜けな王太子です。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月10日「カクヨム」日間異世界ファンタジーランキング2位 2020年11月13日「カクヨム」週間異世界ファンタジーランキング3位 2020年11月20日「カクヨム」月間異世界ファンタジーランキング5位 2021年1月6日「カクヨム」年間異世界ファンタジーランキング87位

見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます

珠宮さくら
恋愛
ローザンネ国の島国で生まれたアンネリース・ランメルス。彼女には、双子の片割れがいた。何もかも与えてもらえている片割れと何も与えられることのないアンネリース。 そんなアンネリースを育ててくれた乳母とその娘のおかげでローザンネ国で生きることができた。そうでなければ、彼女はとっくに死んでいた。 そんな時に別の国の王太子の婚約者として留学することになったのだが、その条件は仮面を付けた者だった。 ローザンネ国で仮面を付けた者は、見るに堪えない顔をしている証だが、他所の国では真逆に捉えられていた。

婚約者を奪った妹と縁を切ったので、家から離れ“辺境領”を継ぎました。 すると勇者一行までついてきたので、領地が最強になったようです

藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。 家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。 その“褒賞”として押しつけられたのは―― 魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。 けれど私は、絶望しなかった。 むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。 そして、予想外の出来事が起きる。 ――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。 「君をひとりで行かせるわけがない」 そう言って微笑む勇者レオン。 村を守るため剣を抜く騎士。 魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。 物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。 彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。 気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き―― いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。 もう、誰にも振り回されない。 ここが私の新しい居場所。 そして、隣には――かつての仲間たちがいる。 捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。 これは、そんな私の第二の人生の物語。

居候と婚約者が手を組んでいた!

すみ 小桜(sumitan)
恋愛
 グリンマトル伯爵家の一人娘のレネットは、前世の記憶を持っていた。前世は体が弱く入院しそのまま亡くなった。その為、病気に苦しむ人を助けたいと思い薬師になる事に。幸いの事に、家業は薬師だったので、いざ学校へ。本来は17歳から通う学校へ7歳から行く事に。ほらそこは、転生者だから!  って、王都の学校だったので寮生活で、数年後に帰ってみると居候がいるではないですか!  父親の妹家族のウルミーシュ子爵家だった。同じ年の従姉妹アンナがこれまたわがまま。  アンアの母親で父親の妹のエルダがこれまたくせ者で。  最悪な事態が起き、レネットの思い描いていた未来は消え去った。家族と末永く幸せと願った未来が――。

【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます

との
恋愛
「結婚おめでとう」 婚約者と義妹に、笑顔で手を振るリディア。 (さて、さっさと逃げ出すわよ) 公爵夫人になりたかったらしい義妹が、代わりに結婚してくれたのはリディアにとっては嬉しい誤算だった。 リディアは自分が立ち上げた商会ごと逃げ出し、新しい商売を立ち上げようと張り切ります。 どこへ行っても何かしらやらかしてしまうリディアのお陰で、秘書のセオ達と侍女のマーサはハラハラしまくり。 結婚を申し込まれても・・ 「困った事になったわね。在地剰余の話、しにくくなっちゃった」 「「はあ? そこ?」」 ーーーーーー 設定かなりゆるゆる? 第一章完結

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

【完結】不協和音を奏で続ける二人の関係

つくも茄子
ファンタジー
留学から戻られた王太子からの突然の婚約破棄宣言をされた公爵令嬢。王太子は婚約者の悪事を告発する始末。賄賂?不正?一体何のことなのか周囲も理解できずに途方にくれる。冤罪だと静かに諭す公爵令嬢と激昂する王太子。相反する二人の仲は実は出会った当初からのものだった。王弟を父に帝国皇女を母に持つ血統書付きの公爵令嬢と成り上がりの側妃を母に持つ王太子。貴族然とした計算高く浪費家の婚約者と嫌悪する王太子は公爵令嬢の価値を理解できなかった。それは八年前も今も同じ。二人は互いに理解できない。何故そうなってしまったのか。婚約が白紙となった時、どのような結末がまっているのかは誰にも分からない。

処理中です...