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第二章
24聖女の祈り
しおりを挟むミーシャの槍がリアンの体を貫く事はなかった。
「なっ!」
強い結界がリアンを守り、逆に槍は弾かれてしまった。
「どうして!」
「これは…」
リアンの胸から落ちたのは一輪の花だった。
「あれは聖花?」
「ですが、私のものではありません」
ジュリエットの育てている聖花は白い百合だった。
リアンを守った聖花は蓮の花で色も淡いピンク色だった。
「これはルーアンの」
「結界魔法が使えなくとも聖女の祈りを長年込めていた故に…」
聖女としての能力が低くても祈りの強さが女神の加護を得ることができる。
「強い祈り。ルーアンの長年の思いですね」
「愛の力か」
リアンを思う気持ちが聖女の祈りの力を強くさせた。
例え力は強くなくともリアンを守ったのだ。
「花が消えた」
「ええ」
ジュリエットの聖花程の力はなく、一度だけ力を発揮して消えてしまった。
「フンッ、一度だけしか使えないじゃない」
ミーシャはルーアンをあざ笑っていた。
聖女としての能力も低く、完全に守る事が出来ないと思ったのだ。
「一度守れたからって」
リアンを再び襲おうとした時だった。
後方から矢が飛んで来た。
「何…」
胸に突き刺さった矢と共に、持っている槍に皹が入る。
「一度だけじゃないわ!」
「ルーアン!」
「リアン様に手出しはさせないわ!」
そこに現れたのは聖女の弓を構えるルーアンだった。
「何で…」
「私は避難する振りをして神殿の地下に入り、これを取りに行って来たのよ」
服も髪も汚れてボロボロになっているルーアンは初代聖女が使った聖女の武器を探していたのだった。
「ふざけるな!」
「聖女のなりこそ来ないに言われたくないわ」
矢をまた一本を射る。
「ああああ!」
頭に矢を射ぬいて魔力が外に出てしまう。
「リアン様はこの国の最期の希望なのよ。手出しはさせないわ」
既にミーシャは力を大幅に失っているのに対して、妙だと感じた。
(おかしいわ…)
少しずつ邪悪な魔力が強くなるのを感じていた。
「ジュリエット?」
「強い魔力を感じる…とても黒い憎しみの籠った魔力」
力を失ったミーシャから魔力を感じるのはおかしいと思った矢先。
「来る」
聖女と魔女は正反対の存在故に感じ取ることができる。
「何だ…この邪悪な魔力は」
「近づいて来る…いいえ、すぐ傍に」
天井を見上げると、黒い魔力が溢れ魔法陣が浮かぶ。
黒い魔法陣と共に現れたのは――。
魔物を従えた魔女、イライザだった。
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