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第一章侯爵令嬢の婚約者(仮)
7引っ越し
しおりを挟む早朝に草むしりをしていたら、玄関先で馬車が止まった。
「お客さんかな?」
「いいえ、あれは荷物を運んできたのでしょう」
一緒に薪割りをするリオネル。
本当にイケメンは何をしても似合うなんて思う今日この頃。
「アレクシウス、貴方の荷物…今度は何をしているの」
「草むしりを…」
「背後で侍女が泣いているわよ」
何時の間にいたんだ!
振り返ると何故かしくしく泣いている侍女さん達。
「使用人泣かせ」
「泣かす気はないですけど」
「それから!」
ビシッと指を指される。
「厳禁よ」
「何がですか?」
「それよ!敬語禁止!敬称禁止!遜るの禁止!」
禁止がいっぱいだな。
何がそんなにいけないんだろうか?
「貴方、仮にも私の婚約者でしょ!なのに遜った態度をして…今から私を名前で呼びなさい!レティーと呼ぶのよ」
「愛称はきつい…」
「私の言うことが聞けないの!」
キッと睨まれてしまう。
しかも何故か使用人の皆さんがじーっと見る。
「世間の仲睦まじい婚約者は愛称で呼ぶそうよ。婚約者攻略本に書いてあるわ」
「何それ!そんなもの何処に…」
「侍女見習いに借りたのよ」
侍女見習いってあの元気な女の子か。
「リアン!」
ものすごいスピードで去って行く侍女さん。
確か湯殿でお世話をしてくれた先輩侍女さんだった。
「この本によると対等な婚約者の関係では名前で呼び合うのが望ましいとあるわ。よって命じます。今日から私をレティーとお呼びなさい」
「その時点で対等じゃない…」
「何かおっしゃいまして?」
結局のところ拒否権はないじゃないか。
まぁ本人の了承を得ているけど。
「それで荷物は」
「部屋に」
荷物はたいしたものはない。
自分で運べるがここで運べば今度は家令のセバスチャンが出てきそうだ。
なんていうか、少しでも重い荷物を運ぶと止められるんだよな。
「アレクシウス様、何事も一歩でございます」
「ありがとうリオネル。一生ついていくぜ」
「いえ、逆です」
なんてナイスガイなんだ。
イケメンで優しくスマートだなんて。
身近にいた護衛騎士と比べば月とスッポンだな。
「俺、これからリオネルを目標にしようかな」
「なりません!」
「えー…何でだよ」
身近にお手本となる人がいる。
男塾の基本だろ?
「剣術は無理でも俺もリオネルみたいなイケメンになりたいな」
いや、それは高望みし過ぎか。
鍛え抜かれた体に長身に金髪に褐色の肌。
「神様は不公平だよな。リオネルみたいな正統派の王子様がいるんだから」
男の俺から見てもかっこよくて目眩がする。
「特に綺麗だよな青い瞳…褐色の肌もかっこいいし」
「え…」
そういえば前世でも日焼けした肌に憧れたけど変な部分だけ焼けたんだ。
しかもボーダーのような模様になって笑いものだった。
「というわけでお願いします先生」
「アレクシウス様…」
「言っている傍から護衛を困らせるのではありません!」
何故かまた怒られてしまった。
その所為で、剣術の授業は追加になってしまったのだった。
「疲れた」
疲れてベッドにダイブする俺。
引っ越しは侍女さん達がしてくれて俺がすることはなかった。
「明日筋肉痛決定だな」
しくしく泣きながら痛む腰をさする。
「アレックス」
ちなみにだが、俺の愛称で呼ぶようになったレティー。
でも俺の愛称なんて教えたのかな?
まぁ、どこかで聞いたのかもしれない。
幼少期は王宮で愛称で呼ばれていたし構わないのだけれど。
「それよりも三日後、貴方のご両親がいらっしゃるから」
「え?」
「何驚いていますの?我が家に招待することになってますわ」
そういえば婚約の事を何も言ってない。
こちらから連絡することもできない状況だし、王都から遠い領地にはまだその話は届いていないと思った。
「既に辺境地まで噂が流れてますわよ」
「は?何それ!」
「おしゃべりな貴族令嬢は多いですもの。私を下げおろしたい者も…ですからその前にお父様が手紙を送り、岡様が直接領地へ向かわれました。だから当初挨拶に遅れましたのよ」
俺の知らない場所で色々と話が進んでいる。
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