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第一章侯爵令嬢の婚約者(仮)
28剥奪
しおりを挟む螺旋が描かれ魔法陣が浮かび上がる。
体に刻まれた刻印と共鳴するようにして魔力が外へ出ていく。
「魔力が…そんな」
「どうして」
「待て!」
体は動かないけど意識はあるなんて残酷だ。
それとも精霊が意図しているのか。
加護を失う瞬間を自分の目で確認しろというのなら、これほど残酷なものはない。
『愚か者めが』
『堕ちる所まで堕ちたな』
『我らの掟を破り、上位精霊様に手を挙げるとは』
現れたのは精霊だった。
けれど本で見た精霊とは少し異なっている。
「精霊とは複数存在します。四大精霊の配下に当たる精霊です」
「おとぎ話でも出てくるように。四大精霊はこの世界の最高位の精霊王になるのです。最高位はノームです」
「えっ…」
精霊の優劣は国によって異なるけど、
精霊の中でも小人サイズの爺さんズってそんなに偉かったの?
「元より最高位の神、創造神が最初に生み出したのがノームと言われているのです。いわばノームは最高位の神の化身ともいえるのです」
ノームの爺さんってそんなにすごかったの?
気分屋で甘いものが大好きで少しわがままな爺ちゃんにしか見えないんだぞ。
「ですが、ここまで精霊がお怒りになるとは何故かしら?私は水の精霊の加護をいただいてますが…通常精霊は人間とそこまで深い絆はないのです」
「ないの?」
「ええ、継承の儀式の時ぐらいで…私から呼ぶことはできないのです。そもそも常日頃から精霊と接触するなんてあり得ませんわ」
すいません。
普通に常日頃から接触しています。
それに赤ん坊のころから普通に寝食を共にしてきました。
…というか俺の実家にはノームの家まで普通にあるし。
森の妖精が住み着いているんだけど!
「ちなみにだけど。ノームが人間の傍にいるなんてことは」
「あり得ません」
「ですよね…」
どうしよう。
まずいんじゃないのか?
時々ノームの爺ちゃんがわがままを言うのでむかついたから賞味期限ぎりぎりの小麦粉使ってクッキー焼いたし。
古くなった酒を捨てるのもったいないからパウンドケーキにしてお供え物にした。
それだけじゃないぞ!
喧嘩した時はこっそり爺ちゃんの腹に悪戯をして落書きしたんだけど!
罰当たりなことばかりしてたじゃねぇか!
それに爺ちゃん呼ぶときかなりふざけた呼び方を合図にしていた気が…
「ノームは精霊の中でもかなり気難しいので。丁重に接する必要があります。彼らの機嫌を損なうようなことがあれば神話の灰色の時代になりますわ」
後で死ぬ気で土下座しよう。
そして最高級のお菓子を用意して許してもらおう。
そんなことを考えていた最中。
剥奪の儀式は終わり、何かが砕け散る音がした。
「騎士の誇りの剣が砕けたな」
「これで騎士団長は…」
「言うなリオネル」
騎士団長に限らず、騎士団に所属する騎士達は家宝の剣を持っている。
その剣には加護がこもっており、その剣が砕けることは騎士職も永遠に剥奪されることを意味している。
騎士として身を立ててきた者にとって死ねと言われるよりも惨い仕打ちだった。
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