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186作戦の裏側②
しおりを挟む「この地図を」
テーブルの上に広げられたのは王都の地図だった。
「現在あの男の動きを見ると下町で身を隠しているでしょう」
「ええ…」
「既にルートを確保しています。あの男が生きそうな町、宿に協力させます」
ようするに、エセルバートが逃げ込んだ村や町を保護し協力してもらうのね。
「既に金を握らせました」
「買収したんですか」
「これが一番確実です。それにあの男が何か問題を起こす前に協力を頼んだ方がいいでしょう」
既になりふり構っていられない状態だし、作戦としては悪くないけど。
「とある町にあの男の所為で命を失った方がいます」
「え?」
「商家の娘だったそうです」
「自殺って、どういうことです」
結婚詐欺をしている事は聞いていた。
けれど被害者の中に死亡者がいたなんて聞いてないわ。
「公にしていません。その家は既に潰れています。その女性の父親も後を追って川に身を投げて亡くなっているのです」
「どうして…」
貴族でないにしろ年頃の娘が結婚詐欺をされたなら商人としては傷がつく。
平民でも商家ならば裕福だし貴族の家と渡りがあるならどんな噂を流されるか解ったものではない。
だけど自殺って…
「その女性には将来を約束した男性が痛そうです。それをあの男が酒を持って肉体関係を持ったそうです。周りにはまだくらかして、あの男は強引に結婚に結び付けたそうです」
「そんな…」
「その後に事業に手を出し借金だけを作り、財産を持ち逃げして失踪したそうですが、責任を感じた女性は自殺をしました。一人娘だったそうです」
「酷い…酷すぎる」
ありえない。
こんな非道な真似をしたなんて。
「何処まで人を、絆を壊せば気が済むのです。人は一度転落するとここまで酷くなるの?」
「奥様、人はそんな強い生き物ではありません」
私は悔しかった。
その女性はエセルバートに出会わなかったら好きな人と結婚して子供を産んで幸福な日々が待っていたはずだった。
「酷い、酷すぎる」
「奥様が嘆き悲しむ必要はございません。ですが優しさと甘さは別です」
この言葉は…
かつてマヤに言われた言葉を思い出す。
「私は…甘すぎたんですね」
私には厳しさが足りなさ過ぎた。
冷酷になったつもりだったけど所詮は世間知らずだ。
「奥様、人には向き不向きがございます。お優しい方が冷酷になるのは難しいのです」
「はい」
「ですから得意分野の者に任せるのです。この度は私が適任でしょう」
全てを私一人でこなす必要はない。
勿論丸投げは良くないけど。
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