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エピローグ
しおりを挟むそれから一年後。
エセルバートは予定通り厳しい取り調べと再逮捕となり北の牢獄に送られた。
保釈金を支払ってくれる人も面会に来るような人がいるわけもなく、そのまま北の地に送られることになったとか。
その後の事は聞こうとも思わなかった。
新聞で知らされたので調べるまでもないのだけど。
バルト様は正式にジャスティア王国の貴族となり、エレナと電撃結婚をした。
隣国の元公爵家の子息が隣国に移住したのは異例だった。
伯爵の爵位を得る準備は以前から用意しており、用意周到なバルト様に改めて恐ろしくも頼もしと思った。
「奥様!」
「エレナ、そんな体で動いては」
「大丈夫ですわ」
現在エレナは子供を身籠っている。
「本来なら侍女を続けるべきではないのだけど」
「ちゃんと夫の許可は頂いております。それに宰相の座を狙っているのですから侍女を続ける方が好都合ですわ」
「そう…」
他国の貴族が移住して、あげくに宰相は難しい。
だけど、一年前の事件を表に出してお役所勤めが癖になっている官僚をほとんど脅して法律の見直しをさせた。
エセルバートのような人間は異例だけど、裏で似たような事件は隠されて来た。
「臭い物に蓋をする政治は終わりです」
「そうね」
公にしてはならないからといって踏みつぶしていいわけではない。
「生まれて来る子供達の生きやすい世にしたいのです」
「できるわ」
むしろバルト様とエレナの最強タッグがあればできるわ。
今では王都では最恐の夫婦と呼ばれるだけあるのだから。
「あの男の愚行を前に出し、男がこれまでやりたい放題をしていたことを突きつけられましたわ」
「ええ」
法律は感情は関係ない。
公平にするべきだと言われていたけど未だに男尊女卑だった事から公平なんてなかった。
裁判長も男性が行っている。
女性も導入すべきだと義父が進言してくれた。
これまで国王に政治的な事を口出す事はなかったが…
「このままではダメだ。先が短いができることがあるならばな?」
派閥を気にしていた義父は政治に口出せば、陛下の立場が悪くなると考えていたとの事だが、同じような事件を防止る為に法律の見直しができるように動かれた。
「一人だけの声では無理でも群衆の声なら届くわ」
「アリア!」
「旦那様…」
「今度の視察の事で侯爵夫人が」
「はい、今行きます」
一人で抱え込んでも道を切り開けない。
だけど、閉じこもるのではなく踏み出す勇気を持てば。
きっと助けてくれる人はいる。
道は決して閉ざされていないのだから。
「奥様」
「はい、今行きます」
これから先も道は続いて行くはず。
―――完結
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