ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第二部メトロ学園へ入学

20マラソン

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午後の授業が始まった。

「これよりマラソンを行う」

「「「はい!」」」

全員位置に着くように言われるも、エステルを見て考え込む。

「エステル君、君は女子なので…」

(やっぱりね)

特別扱いをする気はないが、この対応はいたって普通だった。

男性と女性では体力が異なり、しかもエステルはまだ成人してない子供なのである程度加減しなくてはならないので普通の対応だったが周りはそう見ない。


「やっぱり無理だろ」

「大体女が騎士科にいることが間違いなんだよ」

「ついて来れねぇなら参加するなよ」


陰口は常に聞こえ。
これ見よがしに言い放ちエステルを追い出そうとしていた。


「エステルさ…」

「待て」

ルークが庇おうとしたがユランが腕を掴み止めに入る。

「大人しくすると」

サブローもじっとこらえる中…


「先生、私ならばお気になさらず」

「いや…しかしだな」

「私も騎士科の生徒です。この程度問題ありません」


こんな挑発に乗るつもりはない。
元より想定範囲内なので何も問題ない。

(それにしても懲りない人)


常に嫌味を言うしか能のない連中に呆れる。


「では始め!!」

教師がホイッスルを鳴らし、全員位置に着き走り出す。



「くそっ…キツイ」

「はぁ…やべぇ」


一定の速度で走るだけではなく競争となっているので生徒達は30分後には疲労が見えるが…


「お先に」

「「「は?」」」

その真横を颯爽と走るエステル。
息一つ荒れておらずしれっとした表情をしている。

(嘘だろ!!)

(何で平気なんだよ!)


クラスメイトは既にバテバテなのにエステルは余裕だった。

それというのも最初の方にペース配分を考えず走った彼等は体力が残っていない。


「ペースを上げる!」

「「「はい!」」」


ホイッスルを鳴らされさらに速度を上げられついていけなくなるクラスメイトは焦りだす。


「邪魔だ」

「どくとね」

その横を軽々と走るユランとサブローも余裕だった。


なんとかかろうじて追いつくルークは汗をかきながらもなんとかペースを崩さず保っている。


「くそっ!!」

「ふざけやがって!!」


一番前を走るエステルを追いかける。


「邪魔だ!」

「っ!!」

全速力で走り接近して腕を振り下ろそうとした。


‥‥が。


バキッ!


「いっ!何しやがる!」

隣を走っていた男の顔にぶつかる。


(クソっ!!)


その反対に挟み撃ちを試みていた男は足をひっかけようとしたが…

「お、エステルさんあれを見ると」

「え?」

くるりと反対方向を見る瞬間、サブローはエステルに足を引っかけようとした男の足を踏みつける。


「すまん、間違って踏んでしもうたと」

「てめぇ!」

「おい、前を見ないと危ないぞ」


興奮する男にユランが緩く告げると。


木の枝に頭にぶつかり倒れる。


「ぶっ!」

そのまま派手にコケる。


罠を仕掛けていた連中はさらに遅れてしまった。



「なんだったのかしら?」

「さぁ?」

「気にすことないっちゃ」

「ええ」


三人は内心でいい気味だと嘲笑う。


「こんなんでいいと?」

「ああ、エステルのプライドもあるからな」

三人の目的はエステルの妨害を防ぐことだけだった。

あまり庇い過ぎてもエステルを傷つけるので考えた結果だ。


「後は自分でなんとかするだろ?」

「おお…」


ユランはおんぶにだっこはしない主義だった。
相手の成長の妨げになることは守るということにならない。

あくまで見守るつもりだ。
エステルが本当に助けて欲しいと行った時に手を貸せればいいが、今回だけは正直頭に来たので手を出したが共用範囲内だろうと思った。


(変な所鈍いしな)


エステルは三人が率先して守っていたも井戸端会議をしていたことも気づいていない。


ユランが上手く隠したので知られるこちはない。


(知ったら怒るからな)


バレた時が怖いが、余り酷いようならそんな悠長なことを言ってられない。



(それにしても、こいつ化け物かよ)

完走し終え、一息つくユランはバテバテだったがエステルは軽く汗を流す程度だった。


「お前、何でそんなにスタミナあるんだよ」

「そうかしら?」

ケロッとしているエステルに手助けは必要ないのではないか思ってしまった。
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