ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第九章辺境の聖女

27.アリスの決意

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絶望の闇から目を覚ますと誰かに手を握られているようだった。

ゆっくりと瞼を開くと銀色の光が見えた。


(天使…さ…ま)

まだはっきりしない思考で、まだ真夜中だと気づき手を握ってくれていたのは天使ではなかった。


「アリス、大丈夫?」

心配そうに見つめるエステルがいた。


「エステル様…」

「随分と魘されていたけど」

寝巻のままでランプが傍に置かれていた。

「エステル様!」

アリスは考えることもなく抱きついた。

悪夢を見てエステルが死ぬ光景は生々しくも残っていた。

あれはエステルがとどったもう一つの未来。
エルキネスの言う通り、あの未来を辿った後に、時間を跳んだなんてことを信じたくないし、あんな未来信じることもできない。


(あんなの信じたくない!)


優しくて美しいエステル。

どこか寂し気で孤独そうな目をしていたエステル。
けれど、誰よりも気高くて強く、何でも一人で背負いこんでいた。

一人ぼっちのアリスに手を差し伸べ守ってくれたのは孤独を知るからこそ。

辛い思いをしていたからこそ優しくなれる。


(エステル様がもし一度死んでいたとしたら…)

嘘だと思いたくても、エルキネスの言っていたことが本当で。
運命を変える為にも今ここにいて、孤独な戦いを未だに一人でしているならば…


(させない…)

絶対にエステルを一人で戦わせてなるものか。

泣きながらもアリスは怒りを抱く。


この人を傷つけることは許さない。

優しいエステルをあんな強欲な女の所為で死なせるものか。


悪魔がエステルを殺した?
そんなこと認めない。


(誰にもエステル様に手出しはさせない!)


大好きな人で、ずっと友達がいなかったアリスにようやくできた友達。


そして今の幸せをくれたのはエステルだった。
魔導士としてへの道を導き、学園で認められるようになったきっかけをくれたのはエステル達だった。


学園生活や、王宮での実習で得難いものを得た。

そしてエステルが貴族故にどれだけ苦しんでいるか知り。
愛する者を守るべく命がけで戦う姿を見てアリスはエステルを支えたいと思った。


だから――


(私は聖女じゃない…でも!)

学園内では聖女候補として扱われるも、アリスは自身が聖女の資格を持っているとは思っていない。

聖女のような下心のない愛情はない。
今でもエステルへ下心を抱き、エステル親友に収まりながらも婚約者であるクロードを疎ましく思っているのだから。


(私は欲深いけど…でも!)


愛する人の幸せを望むのも本当だった。


「エステル様、アリスは貴方様をお慕いしております」

「ありがとう。私もアリスが大好きよ」


「はい」

その好きの意味は双方にズレがあるのだがアリスはそれでお良かった。

「だから、エステル様は私がお守りいたします。害虫や魔からも」

「えっ…ええ」

どういう意味か解らないが頷くエステルは少し混乱していた。


(エステル様に危害を加えるなら徹底的に潰してやる!)


アリスの中に新たな闘志が芽生えた瞬間だった。





その頃王宮にて。



「ひぃ!」

背中が凍りつくのを感じたクロード。


「おい、クロード。どうした」

「何でもない」


執務室で執務をするクロードは震えていた。
どうしたのかユランは尋ねるもクロードは気のせいだと思うことにしたのだが…


「カップの取っ手が」

「おい、縁起が…」

ボトッ!

「花が…薔薇が」

「花びらじゃなくて花ごと…なんだ?前兆か!」

立て続けに縁起が悪いことが起こり二人は恐れを感じるのだった。

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