聖女の妹は無能ですが、幸せなので今更代われと言われても困ります!

ユウ

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この場を覆う黒い影は瘴気の塊だった。
黒い影に包まれたお姉様はまるで魔女のような姿に変わった。



「ああ…なんてことを」


「サリア、しゃべるんじゃない」


怪我を負いながらも急所は外れていたお母様はお父様に支えられながら涙を流した。


「私があの時…」

「今更言っても仕方ない。悪い条件が揃い過ぎたんだ」



当時のお姉様の環境は過酷と言えるかもしれない。
私はお祖母様とお祖父様に嫌われ存在を無視をされ続けて来た。

でもお母様は庇ってくれた。


「私がお姉様からすべてを…」

「それは違う」

「フレディー?」

私の言葉を否定するフレディーは告げた。


「彼女は確かに厳しい環境に身を置いていたのは確かだ…だが君も同じだ」

「私は…」

「物心つく頃から祖父母に無視され、社交界では不名誉な噂を流された」


フレディーの言葉は胸に突き刺さる。
社交界での私の環境は決して良いものではなかった。


外に出れば私は責められる日々。
味方は春麗だけだった。


「サーシャだけが悪いなんて理屈は通らない。選んだのは彼女自身だ」

「お姉様自身?」

「そうだ。誰にも心を開かず、他人を見下し、両親すらも見下した結果だ」


そうだ…


お姉様の事を心配してくれる人はいたはずだ。
でも、聖女という立場にこだわるあまり差し伸べられた手を自分の手で拒絶した。


幼少期に歪んだ教育を受けたかもしれない。


だけど…

「君のご両親は彼女に手を差し伸べなかったのか?」

「そんなことありません」

お母様はお祖母様に睨まれながらもお姉様との時間を作りお茶にさそっていた。

でも拒絶したのはお姉様だ。
お祖母様に何か言われたのかもしれない。


でもあの二人が亡くなってからお姉様はお母様に対して厳しい態度を取るようになった。

むしろ、前よりもお母様を避けるようになった。


「すべてが行動により繋がる。選んだのは貴女だ」

「うるさぁい!」

「フレディー!」


黒い竜巻がフレディーに向かってくる。


「残念だが」


黒い竜巻はフレディーにより弾かれる。

「竜騎士をあまり甘く見ないでくれ」

「どうして…」

「このような魔を浄化できないとおもったか」


常に戦場に身を置くからこそなせる業なのかもしれない。


でもこの状況が続いたら…


「ジャネット!」


「サリア!」


そんな中、お母様がお姉様の前に飛び出した。


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