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第一章婚約破棄と勘当
4.下衆な婚約者
しおりを挟む両親の裏切りを知ったリリーは、最後の頼みの綱は婚約者のリーンハルトだと思った。
婚約者が虐げられている事実さえ知ればきっと助けてくれると信じていたが、またしても二度目の裏切りを受けるとは思っていなかった。
「大丈夫よ。だってリーンハルト様はお義姉様の婚約者で幼馴染なんだから」
幼い頃から一緒にいる幼馴染ならば誰よりも味方になってくれると思っていた。
貴族社会では幼い頃に婚姻を結び、その間に心など存在しないなど知らなかったリリーはこの時。
自分の浅はかさと愚かさを思い知ることになる。
「リリー、どうしただい?主役の君がいないなんて」
「ごめんなさいリーンハルト様」
「何度も言っているだろう?リーンと呼んでくれと」
「えっ…でも」
やたらと距離が近く、ボディータッチが多い事は今さらなのだが、今日は一段と酷いと思った。
下町暮らしの時も仲良しの友達とスキンシップはあれど、ここまで接近はしないし、ましては相手は姉の婚約者だ。
(やたらと触って来るわね…)
距離を保とうとするも、リーンハルトはリリーの腰を掴む。
「ちょっ…リーンハルト様!」
「照れているのかい?そんな恥じらいもチャーミングだよ」
そう言いながら手の甲にキスをされるが、ねちっこいと感じながら嫌悪感を感じる。
(なっ…何考えているのよ!)
婚約者の妹にあまりにもやり過ぎだと思ったリリーは逃げ腰だった。
「少し距離が近すぎると思いますが」
「この程度問題ない…ああ、あれに気を使っているのか」
(何?)
父親と同じような呼び方をして、ゴミでも見る様な目をしたリーンハルトに嫌な予感がする。
「気にしなくていい。それともまた何か嫌味を言われたのかい?」
「はい?」
嫌味とは何のことかさっぱり解らなかった。
「可哀そうに、庶子だからって馬鹿にされ虐げられているのだろう?あれは自尊心が高いからね…確かに君は身分が低い平民であるが、美しい」
(この男…)
この時リリーは気づいた。
優しい素振りを見せながらも、平民であることをこ馬鹿にしているのではないか。
さっきから庶子だとか平民だとか言う時。
「あれは陰気であるから、君のような愛想の良い女性に嫉妬しているんだよ。両親に愛されている君を妬んで。本当にどうしようもない性悪だ」
「止めてください」
「君は本当に優しいね?虐げられながらも姉を庇うなんて」
「私は姉に虐げられてなんか…」
「もういいんだよ我慢しなくても…僕がいる。君を守ってあげるから」
何を言っても話を聞いてくれないリーンハルトは自分の都合のいいように話を進めて、まったくリリーの話を聞かなかった。
「何も心配ない。僕が君を守る」
「守る?」
「ああ、君を妻に迎え…あれは侯爵家から追い出せばいい。なんだったら適当な相手を見繕えば文句はないだろう」
(屑男だわ!!)
上機嫌に言い放つリーンハルトは少しばかり酒に酔っているのか、ぺらぺら話し始める。
リリーがどんな顔をしているか知りもしないで。
「私に姉の婚約者を奪った悪女になれと?」
「ははっ、純粋だね?貴族の間では珍しい事じゃないさ」
「貴族の間では…」
どうして貴族とはこうも人として有るまじき行為を平然とやってのけるのか。
踏みつけた人は良くても踏みつけられた人の気持ちはどうでもいいのかと怒りを覚える。
「君と僕は真実の愛を育むんだ」
「・・・・ないわ」
「え?」
この時から、リリーの心は冷たく凍り付いた。
貴族なんて最低な生き物で、特に男とは取るに足らない生き物だと判断した。
こんな屑連中に何時か嫁ぐくらいならば出家するか、下町で貧しく機織りをして一生を終える方がマシだと心の底から思ったのだった。
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