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9男の度量
「平気なのですか!」
私に距離を詰めて感情的になるニナ嬢。
先程とまったく別人だと感心しながらも私はできるだけオブラートに言葉を選んだ。
「噂ですし…彼女は幼少の頃からライルハルト殿下に憧れていましたし」
「だからって…」
「諦めてくれ。コイツはそう言う男だ」
チャールズ、何が言いたいんだ。
「女性ならより過ぎれた男に惹かれて当然だ。うだつの上がらない騎士よりも隣国の剣帝とも呼ばれる誉れ高い皇太子殿下だ。比べるまでもない」
「お前がそんなんだからあの女がやりたい放題の我儘ばかり言っているんだぞ。ここまで軽んじられて…」
「その程度の我儘を受け入れられなくてどうする…とは言っても政略結婚だからな」
最初から決められた婚約で互いに心はなかった。
それでも幼馴染で妹のように思っていたからこそ育てて行く愛もあると思ったが。
「私は覚悟をしているが、女性側は割り切れない部分があるだろう」
「お前ばかり我慢するのか」
我慢しているつもりはない。
婚約者の我儘を受け入れるぐらいの器量がないとこの先やっていけない。
だが…
「最近は何をしても怒らせてしまって」
「あの女が悪い。我儘放題で」
どうしてこうもサンドラを嫌うのだろうか。
チャールズだって女性の我儘は可愛い物だと言っているのにサンドラに対しては厳しい。
兄上も婚約解消をしても良いと言うが、私はそんなつもりはない。
「ご無礼を承知でお願いいたします。一度姫様にお会いになっていただけませんか?」
「えっ…」
「勿論お二人きりで会ってくださいとは申しません」
王家に仕える身では断るのは当然だ。
だから私の答えは決まっているのだが、何故私に言うのか解らない。
「シオン。俺は彼女の気持ちが解る」
「チャールズ?」
「お前ならば王女殿下の心の闇を薙ぎ払うことができるはずだ。王女殿下を苦しめる魔を切る…騎士としてこれ以上重要な役目はないだろう」
私の迷いを察して背中を押してくれた。
だが相手は一国の姫君だ。
無礼が無いようにしなくてはならない。
念の為にサンドラにも伝えておいた方がいいと思ったが。
「サンドラ様は現在殿下と…」
「そうでしたか、では手紙を渡していただけますか」
「かしこまりました」
「直接彼女に渡してください。帰ったらすぐにでも」
大事な事が書いてあると伝え、私はヴィッツ伯爵家を後にした。
しかしその手紙が読まれることはなかった事を知る由もない。
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