婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。

ユウ

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16最悪のタイミング

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「ライルハルト様愛してます」


王宮の庭園で節操がない。
人目を忍んでいるが、夢中でキスをしているサンドラ。

「お待ちくださいサンドラ嬢…」

「愛しているんです。貴女様の事を…」

「貴女は婚約者がいる身で」

「形だけです。あんな凡庸で剣を振るうしか能のない男等気になさらないで」


凡庸か。
確かに私は兄のような文武両道ではない。

「何を…」

「私が愛しているのは殿下お一人。あんな男と時間を無駄にするなら殿下との思い出が欲しいのです。あの男は私が望まないのに婚約を望んでいる。ですが心だけは貴方様の物」


解っているが。
ここまで私との婚約が嫌ならば断ることもできたはずだ。


「あのクソ女」

「ぶっ殺してやる」


しかし私の心は思った以上に冷静だったのは友がこれ以上無い程怒っていた事。


「待て二人共」

「捨て置けというのですか」

「そうではない。現行犯逮捕するなど生ぬるいではないか?」


将軍…
完全に現役時代の鬼神の表情になっているな。


現役時代、鬼神と恐れられ戦場に出れば敵なしと言われていた。
今では少しだけ穏やかになられているが、まだまだ現役に出られるのだが。


「将軍…」

「シオンよ。私はお前程良い男はおらぬと思っている」

「ありがとうございます」

「故にあの女の夫にはお前はもったいない。結婚前で良かったではないか」


ポンと肩を叩かれる。
このやりとりはまだ私が見習いだった時を思い出す。


「ビッチ令嬢が」

「ヴィッツです」


「どうでもよい。とにかくこの場を去るぞ。証拠写真も撮ってな?」

何時の間にか写真を撮っている将軍に驚きだ。


「あの女ぁぁぁ!ぶっ殺してやるわ」

「母上、落ち着いてください」

「私の息子をコケにして!」


穏便に事を済ませたいのに母上が領地から馬を飛ばして来たのだが将軍が事細かに説明し、尚且つ証拠写真と王宮内に設置されている防犯カメラと音声も録音されていたのだけど。


その場で聞かせたら怒るのも無理もない。


「お前、少し落ち着け。邸の調度品を全て壊す気か」

「解ってますわ。平和的に解決しますわ。この証拠品を叩きつけてビッチ令嬢を」

「母上、ヴィッツです」

「あんなのビッチでいいのです」


元から姫将軍とも呼ばれている母上は女性ながらも戦場を駆け回っていた。

腕っぷしは将軍のお墨付きだった。


「既に婚約は解消になっている」

「は?」

父上がため息をつきながら告げられた言葉に驚く。

「随分前から我儘放題は目に余っている。この度の婚約を強引に進めたのは先方だ。甘い顔をしていれば調子に乗って」

「婚約破棄ではなく解消なのですか」

「ああ、あくまで婚約解消にする」


破棄などすれば後から問題になる。

「勿論慰謝料は貰わないが…社交界はどう思うかな?」

「え?」


この時父上が氷の微笑みを浮かべていた事を私は知らない。
そして噂になっているライルハルト殿下に関しても私はとんでもない思い違いをしていた事を知らされることになるのだった。



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