婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。

ユウ

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33男だけの密談①~ディアッカside

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本当に天然とは質が悪いな。


「おいチャールズ」

「ああ…」


気づかれないように俺はチャールズに合図を送る。
視線を感じる。

人の視線ではない。

「恐らく監視というわけではないだろう」

「ああ」

安全の為にこちらの動きを報告するか、同行を映像にして見ている可能性は考えていた。


魔道具を使えば鏡を使って王宮にある鏡を通じて見ることができる。
だが、侍女の一人の髪飾を見て直ぐに気づいたがシオンは気づいていないだろうな。


「どうせ大方、馬鹿な貴族派がシオンを監視すべきだとか言ったんだろ」

「馬鹿だろ。シオンは地位、権力、富に一切執着しないというのに」


むしろこの小旅行でシオンの素行を見れば、申す分ない事が解るだろう。
己の策に溺れるとは馬鹿だろ。


「だがお前の先読みは当たったな」

「この程度軽いぜ。第三騎士団は諜報員も兼任しているからな」


第一騎士団は主に国の重要な公務も行う。
第二騎士団は王都内の安全を守ったり戦場では最前線に出る。
そして俺の配属する騎士団は他国に潜入捜査をしたり情報を集める任務が多い。


だからこそ気づいた。


「さぁて国王陛下と王妃陛下はどう思われるだろうな?」

「お前…」

「きっとシオンの株は鰻登りだろ?あの王妃陛下の事だ」


同盟国の元王女殿下であった王妃陛下は高貴さ故に、シオンのような潔い男は好まれる。
しかも騎士としての誇りが強く、見返を全く求めない。


実直すぎる愚かな男。
そしてその愚か男に俺はかつて救われた。


腐った国を受け入れるきっかけをくれたのは国一番の。


いいや世界一の大馬鹿者だからだ。



「何だ?」


「いや…俺達のボスは気づかないだろうな」


自覚がない癖に無自覚に周りの人間を惹きつける才能は恐ろしい。


「今頃王宮の広間で貴族派の馬鹿は焦っているだろうな」

「フッ、腸が煮えくり返っているだろう」


チャールズも俺と似たようなものかもしれない。
俺とは異なり公爵家の長男で全てを持っているようで何もない。


だからこそ俺達は今笑っていられる。
雁字搦めの世界から抜け出し本当に守りたい物は何かを見つけたのだから。


「俺、アイツがいなかったらここにいなかった」

「何だいきなり」

「アイツが王様だったら良かったのに。そしたらすぐにでも何でもしてやるのに」


本当に心から思うんだ。
欲に塗れ自分の事しか考えない馬鹿ばかりの中でアイツは本当の意味で国を民を大事にしている。



そんなシオンが王様だったらと思っているんだ。

王の資格。
それは権威でも、富でもないのだから。


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