婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。

43恋愛指南～リディアside

許されるなら私はシオン様と愛し愛される関係でありたい。


「私はずっとシオン様を好いておりました」

「リディア様！」

「ヴィッツ令嬢に何度嫉妬したか、羨ましいと思ったか」


身分が高いわけではない。
国に貢献しているわけではないのに、無条件にシオン様の傍にいる事を許され我儘を言っても許される。


「ずっと羨ましくて妬ましかった…貴方様にどのように触れられるのか」


私の方が好きなのに。


あの人よりも私の方が。


「私の方が先に貴方様を見つけたのに…」

「リディア様、どうか落ち着いてください。私はサンドラ嬢とは政略的な物です。幼馴染でありますが彼女は私を嫌っております。私も政略的な…」

「もはやそんなことは重要ではありません」

そう、過去を消す事は出来ない。
でも、ここでシオン様の優しさだけを頂いているのでは彼女と同じ。

むしろ今の私にはスタートラインすら立てない。


「私の事好きですか」


嫌いかなんてズルい聞き方はしないわ。
だってシオン様はそんなことを言わないもの。


「はい…」

「女性として欲してくださるならキスをしてくださいませ」


「リディア様！」


手が震えるけど、でもダメよ。
ここで逃げてはダメ、弱腰になってはダメ。


ディアッカ様も言っていたじゃない。





「いいですか姫様、シオンは女性には皆優しく白博愛主義ですからある程度懐に入る必要があります」

「懐？」

「そうです。アイツはとにかく恋愛ごとに疎い…だからドンドン責めて迫って襲うぐらいして丁度良いんです」

「姫様に恐ろしい事を教えないでください！」

「ニナ、今私は勉強中なのよ」


昨日、ディアッカ様にシオン様と親密になるべくレクチャーを受けた時に言われたのだ。


「姫様、シオンは姫様に好意があります。この俺が言うんですから…それにシオンは姫様のような清楚な女性はタイプです」

「本当に？」

「母君が少々気が強い人でしたので」


アスハルト辺境伯爵夫人は騎士としても申し分ないと聞く。
私とは正反対だ。


「いいですか、シオンは押しに弱い。押して押すんです…ですが闇雲に押すのではなく匙加減が必要です」

「どうしたらいいのかしら…私もそこまで詳しくないのだけど」

「まぁ、婚約中に清い付き合いをしていてもボーダーラインを守れば良いんですよ」


ディアッカ様に教わったのは、高度なテクニックでも縁起でもない。
男心を擽る話術でもない。


「姫様の気持ちをただ伝えて迫るんですよ」


とてもシンプルな方法だった。